関東大震災で地方への菓子供給が全面ストップしたことを受けて “地方にも菓子の量産工場を”との決意のもと、大震災から約1年後の1924年11月、新潟県柏崎(市制施行は1940年)で創業したブルボン(当時・北日本製菓)。地震など自然災害への危機意識を常に持ちつつ自然との調和を重視して千年の大計を描く。
ブルボンの社会貢献の取り組みとして、消費者の「心と体の健康づくり」のサポート、とりわけ生涯を通じて誰もが楽しめる文化・芸術、スポーツ活動の支援を行っている。
文化支援活動を象徴するものとしては、日本文学者・文芸評論家のドナルド・キーン氏(1922‐2019)との親交が挙げられる。
キーン氏と柏崎市民、ブルボンとの間には、柏崎を角書きにもつ幻の古浄瑠璃「越後國柏崎 弘知法印御伝記」の復活上演活動を通じて絆が育まれていた。
この古浄瑠璃は、キーン氏の提案により2009年に柏崎市で復活上演され、中越沖地震からの復興の険しさに立ちすくんでいた市民の希望のともしびとなったと言われている。
そんなキーン氏は、東日本大震災発生後、被災地で懸命に生きる人々の姿を知り「いまこそ、日本人になりたい」と日本国籍取得の決意を表明。
研究の拠点であったニューヨークの書斎がなくなってしまうことから、ブルボン全面協力のもと2013年9月に設立されたのが「ドナルド・キーン・センター柏崎」(新潟県柏崎市)となる。
このセンター設立について、キーン氏と親交があったブルボンの吉田康社長は「キーン先生は日本の大恩人であり、誰かが形にしなければと思い、柏崎でやろうと考えた」と振り返る。
センターの敷地は柏崎市の市街地にあり、ブルボンが土地建物を購入し、耐震補強工事を完了させていた。当初は宿泊施設付き研修センターの建設を計画していた。
吉田社長はその計画を見直し、1階と2階部分を「ドナルド・キーン・センター柏崎」とした。「2階だけ天井が高くて、キーン先生の書斎と同じ高さだった。これも何かのご縁」と述べる。
2階の復元展示室では、コロンビア大学に近いハドソン川の川辺に建つ由緒あるアパートメント11階の書斎を再現している。
そのほか文化支援活動として、カジュアルクラシックコンサート「めざましクラシックス」を1997年のスタート時から継続して協賛している。
「コンサートには高嶋ちさ子さんと軽部真一さんが出演下さりお付き合いを続けさせていただいている」という。