食生活研究会は9月18日、「第32回食と健康講演会」を開催した。
当日は2部構成で行われ、第1部は同研究会が22年度から研究助成する京都大学大学院農学研究科教授の佐々木努氏が、「生活習慣病の撲滅に向けた食行動と栄養研究」を報告。第2部では、順天堂大学名誉教授で同大大学院医学研究科・文科省事業スポートロジーセンターセンター長の河盛隆造氏が医学とスポーツを融合した新たな学問領域であるスポートロジーが目指す予防医学としてのエビデンスの数々を紹介した。
冒頭、正田修理事長があいさつ。正田理事長は「当財団は創設以来、長年にわたり食にかかわる研究者、研究機関への助成を行ってきた。公益財団法人への移行後は新たに海外から日本への留学生事業を開始し、昨年度からは日本から海外への留学生支援事業を行っている。研究助成は最近10年間で153件、1億4400万円に及び、今年度は17件、1600万円を助成した。うち7件はこれまでの研究実績を評価し、特に今後の研究の発展を期待する研究者に3年間継続して助成してきた」と取り組みについて説明した。
講演で佐々木教授はFGF21誘導性の希少糖は食事性の肥満を予防するという動物実験の結果を発表し、ショ糖の摂りすぎを抑えられることで食生活の是正に役立つとした。また周産期のマウスにかつおだしを与えることで子マウスの脂質嗜好性が低下した知見を報告。さらにMCT(中鎖脂肪酸)の摂取によりLCT(長鎖脂肪酸)を減らすことができ健康的な食生活に貢献できる可能性があるとも述べ、そのメカニズムについても述べた。
河盛名誉教授は「健康長寿をめざし、学童期から身体活動を増やし、正しい食生活をすべき!」をテーマに、自身がセンター長を務めるスポートロジーセンターでの研究成果などを紹介。糖尿病を予防する上で学童の頃からの運動の重要性を指摘したほか、現代人に増えている「痩せメタボ」を解説。運動不足による筋量や筋力の低下は筋でのインスリン作用の低下などにつながることを例示した。
一方、センターが所在する東京都文京区在住の高齢者を対象にした調査では、中高生期に運動部で活動していた人は高齢期の骨密度や筋量・身体機能の衰えが少ないという結果を披露し、学生時代からの運動の重要性を説いた。