サントリー食品インターナショナルは8月23日、人に言いづらい心身の不調や悩みを抱える若者のセルフケアをサポートする新プロジェクト「menphys(メンフィス)プロジェクト」を開始した。
メンフィスとは、Mental(メンタル・心)とPhysical(フィジカル・体)を組みあせた造語。
この日発表した佐藤晃世SBFジャパン常務執行役員は「若者の気持ちに寄り添いながら心と身体の両面からサポートする新しい取り組み」と語る。
同社が考える、人に言いづらい若者の心身の不調や悩みの一例は以下の通り。
――女性特有の心と体の不調(イライラする、落ち込む、傷つきやすくなるなど)
――気象の変化によって起こる不調(頭痛、眠気、肩こりや腰痛、気分の落ち込みなど)
――髪の悩み(髪の毛が細くなる、抜けやすくなる、ボリュームダウンなど)
――男性特有の悩み(大事な時に力が発揮できないなど)
――肌の悩み(乾燥、赤み、かゆみ、くすみ、毛穴の開き、吹き出物など)
――睡眠にまるわる悩み(寝付けない、眠りが浅い、寝たくない時に寝てしまうなど)
これらの中から、男性特有の悩みと女性特有の心身の不調に着目したセルフケアドリンク2品をメンフィスプロジェクト第1商品として公式オンラインストアで8月27日に発売開始する。
プロジェクトの特徴の1つは、商品の販売に留まらず、様々な施策を通じて若者に気づきを与える点にある。
「気づいていただくことが第一歩。悩んでいる人が自分以外にもたくさん存在し“自分は特別ではない”と感じていただきたい」と述べる。
ターゲットの若者は、年齢では明確には定義しておらず、幅広く成人を想定している。
もう1つの特徴は、商品コンセプトや気づきを与える施策などを、心身の不調や悩みを抱える当事者あるいは当事者に近しい人が考案している点にある。
プロジェクトは、SBFジャパンブランドマーケティング本部に所属する土屋友胤(ともつぐ・35)さんと佐藤和夢(かずむ・31)さんが中心となって発足された。
「若者の人に言いづらい悩みというのは、普段の飲料の調査インタビューでは決してみえてこない。自身も同じ悩みを抱えていたり、周囲の声を聞き取ったりする当事者である若手社員が生活者として気づいて自ら手を挙げてプロジェクトへと発展させた」と佐藤常務は振り返る。
提案を受けた佐藤常務は当初、あまりにもセンシティブな内容には踏み込むべきではないとの考えが脳裏をかすめたという。
「センシティブな内容には触れないほうがいいとも思っていたが、実際に若者の話を聞くと全くそのようなことはなく、反対に“どうしたらいいのかわからない”という若者が物凄く多く、会話できただけで気持ちが楽になったという話を聞いたことが決め手になった」と説明する。
プロジェクト立ち上げのきっかけについて、土屋さんは「私自身も大事なタイミングで力が発揮できないことが過去にあり自信が持てないという悩みを抱えていたことがあった」と吐露する。
そうした中、SBFジャパン商品開発部との情報交換を経て自ら手を挙げプロジェクトを推進した。
「同僚からも“パートナーをがっかりさせたくない”との声や“周りの友人が悩んでいるからぜひ開発してほしい”といった声が思っていた以上に多く、このプロジェクトを通じてそうした方々の助けになりたい」と土屋さんは力を込める。
商品開発部内にも新しい種を自ら探索する仕組みがあり、サントリーグループには多種多様のアイデア創出のための制度が存在するという。
商品開発部で成分設計を担当する烏谷幸枝さんは「普段から展示会や海外から情報を収集しており、アメリカではセルフケア的な商品が若者の間で凄く流行っているという情報を得た。これをブランドマーケティング部に共有したところ“やりたいです”という反応で一緒になれた」と振り返る。
プロジェクトを進めていく中で新たな気づきも得られる。
女性特有の不調について相談されることが多いという佐藤さんは「プロジェクトを進めていく中で、私自身も過去の不調がもしかしたら女性特有の悩みではないかと気づくことがあり、もう少し早く知っていればよかった」と語る。
施策の1つとしては、10~30代の若者864人を対象に行った「心身の健康に関するアンケート調査」結果から明らかになった若者のリアルな不調や悩みの声を「若者ぶっちゃけ健康白書」と称するサイトで公開している。
8月30日から9月1日にかけては、セルフケアを始めるきっかけづくりを目的としたカフェをオープンする。
ここでは、メニューから料理を選ぶのではなく、自身の不調や悩みに合わせ、それらの緩和に役立つとされる栄養成分を摂取できる食材を使ったオリジナルオープンサンドが提供される。
同社オフィス内の社員食堂でも、プレゼンティーズムの改善の一助を目的に、同様のオリジナルオープンサンドを提供する。
プレゼンティーズムとは、欠勤には至っておらず、勤務しているが、心身の健康問題が理由で生産性が低下している状態のことを意味する。