岩塚製菓の主力商品「田舎のおかき」シリーズが勢いづいている。
昨年11月に設備投資が完了し生産能力が増強され、これまで応え切れなかった需要増に対応できるようになったことが要因。すでにこれまで供給量の問題から手薄であった西日本では導入が拡大し定着化の動きもみられる。今後、米菓市場に旋風を巻き起こす可能性がある。
3月14日取材に応じた槇大介社長COOは「『田舎のおかき』は、今期(3月期)スタートの23年4月のタイミングでは生産調整が続いていたが、夏場に解消し11月には生産体制が増強されたことで勢いが加速している」と語る。
生産能力増強前は高まる需要に対応し切れなかったことから、関東を中心とした既存の流通企業への導入に制限を設けながらであったが「今後は伸び代のある西日本をはじめ広く案内できる」と期待を寄せる。
西日本など新導入された売場ではリピートの動きもみられ、全般的には「現在“頂点が見えない”勢いで伸び続けている」という。
好調要因は、国産米100%など原材料へのこだわりと5日間という手間暇かけた製造工程にある。「手前味噌だが『田舎のおかき』は米菓業界の中で唯一無二の商品だと自信を持って言える。外側がカリっと堅く、内側がホロホロと柔らかい食感で、パキッと2つに割ると、断面がものすごくきめ細やかできれいなスダチ構造(気泡構造)になり、このような商品は類例がない。スダチのきれいさがおいしさに直結する」と胸を張る。
5日間の製造工程の中で一番時間を要するのは冷却工程という。もち製品の製造において冷却条件はその品質に大きな影響を与える。また、乾燥工程では「乾燥機で行うと表面は乾くものの中に水分が残った状態となることから、乾燥工程の中に『ねかせ』と呼ばれる水分調湿がある。乾燥と調湿を繰り返しながら内と外を乾かしている」と説明する。
国産米については、主食用米の飯米(はんまい=加工米)と特定米穀(とくていべいこく)に大別され、同社では「田舎のおかき」を含め全米菓商品で自宅でも食べられる飯米のみを使用している。
収穫された米の中には、粒が十分大きいものとそれに比べ小さい米が混在している。国の基準としては、玄米の段階で1・7ミリ以上の網目でふるいをかけたときに下に落ちてしまう小さい米が特定米穀として扱われる。
一方、網目の上の残り米が飯米となる。国産米市場で、昨秋の収穫量の減少により不足し高騰しているのは特定米穀であり、岩塚製菓では契約圃場から飯米を先物買いして調達していることから、国産米高騰の蚊帳の外にある。
「飯米でつくられているため『田舎のおかき』を製造過程のおこわの状態で食べても本当においしく、工場からはお米の甘い香りが漂っている。お米の風味が飛ばないよう、精米を生産工程に入るギリギリまで引き付けて行っている」と語る。
同社はかねてより、もち米商品に特化していく方針を固めている。この方針のもと、2019年には「田舎のおかき」などを生産する「沢下条工場」(新潟県長岡市)の敷地に「BEIKA Lab(ベイカラボ)」を建設。「ベイカラボ」1階が、もち生地の生産ラインとなっており20年から稼働している。
「ベイカラボ」の生地ラインは、生産工程を一つ一つ見直して省人化を実現した最新鋭のものとなる。
一般的に、もちの生地工場は、もち米を蒸かしたり、かたどりしたりと重筋作業が多く、若い男性中心の職場になっているのに対し、「ベイカラボ」では女性でも働けるよう重筋作業は機械が担っている。
「ベイカラボ」の稼働により、もち米商品の生産の前工程である、もち生地の生産能力は高まったものの、焼成・味つけ・包装の後工程が追いつかず、しばらくはアンマッチな状態が続いていた。
しかし11月に焼成・味つけ・包装のラインが「沢下条工場」内に増設されたことで、生地工場の供給分をすべて飲みこめる後工程が完成し生産能力を増強させた。
これに先立ち実施した賞味期限の延長も奏功。遮光性の高い包材に変更して「田舎のおかき」の賞味期限を「醤油」「ざらめ味」「青のり味」で150日から210日、「塩味」で150日から180日にそれぞれ延長して5月末にリニューアル発売したことで多めに在庫できるようになり高まる需要に対応できる体制を整えている。