2024業界天気予報 空覆う不穏な雲行き 知恵と勇気で吹き飛ばせ

「これまで」問われる一年に

いつものお正月が、4年ぶりに戻ってきた。昨年の今ごろはまだ尾を引いていたコロナ禍での自粛ムードも去り、久々に晴れやかな気持ちで新年を迎えた方も多いだろう。怒涛のごときインフレと収まる気配をみせない円安に翻弄された昨年、食品企業は各社各様の創意と工夫で困難を乗り越えた。そして明けた2024年。食品界にはどんな空模様が広がっているだろうか。本紙新年号吉例・元祖「業界天気予報」では、今年も担当記者の知見と独断で各カテゴリーの天気をずばり予報する。

「10月ごろから運送会社が『もう運べません』と言ってきている。物流2024年問題が大混乱を巻き起こすことは間違いない」。ある中堅食品メーカーの社長が断言する。

5年間猶予されてきたドライバーなどの残業時間の上限規制適用がいよいよ4月に迫ったことで、食品業界でもサプライチェーンへの甚大な影響が懸念されている。人手不足が深刻化するなかでも、社会全体が現場に無理を強いることでなんとかやり過ごしてきたことのツケが回ってきた。

誰もが薄々気づいていながらも、なんとなく見過ごされてきた問題が、ついに限界を迎えて人々の前に立ちはだかる——。昨年にかけて世相を騒がせたいくつもの事柄は、詰まるところそんな事態だったのではないか。24年問題もその一つだと考えれば、今後も同じようなことが繰り返し起こる可能性は十分にある。社会のこれまでの在り方が、根底から問われる一年になるかもしれない。

アフターコロナを迎え一息ついたのもつかの間、再び不穏な雲行きが覆う2024年。われらが食品業界の天候が気になるところだ。今回、本紙が「はれ」「快晴」と予報した品目・業種は25で全体の2割ほど。「くもり」は44品目・業種で4割近くを占める一方、「あめ」は7品目に留まった。

小売の動向を見てみると、昨年「あめ」だった量販は「うすぐもり」に好転の見込み。コロナ反動に値上げラッシュが重なり買上点数の減少に見舞われていたが、経費削減と積極的な販売施策で利益増に向かう。コンビニは「くもり」から「はれ」に転じた。コロナ禍で落ち込んでいた客足の回復や行楽需要の復活、メリハリ消費を背景にした高価格帯商品の充実など、昨年から進んできた方向でさらに加速するものとみられる。

コロナ禍からの本格的な回復を果たした外食は「うす日」から「はれ」に好転の予報。インバウンド需要も戻ってきた。

中食・惣菜は引き続きの「はれ」。2年連続3%水準で回復しており、その市場規模は10兆円を超えた。人手不足を課題としながらも、容量・レシピの変更や包材仕様の見直しなどで利益を追求する。

アイスクリームは、異常な猛暑も味方につけ「はれ」から「快晴」に。今年も大幅な成長を見込む。

基礎原料系の品目では、値上げでなんとか利益を確保している業務用塩は「くもり」。国内製塩企業は脱炭素化の原資確保を求められ、さらなる値上げもありうる。「くもりときどきはれ」の砂糖は自助努力が限界に達し、価格転嫁せざるをえない状況が続きそうだ。

「あめ」の品目を見てみると、酒税改正で発泡酒と税率が一本化された新ジャンルは、ブランド存続の淘汰圧が強まり市場低迷が続く見込み。かんぴょうは消費・供給いずれも減少が続き、乾椎茸は生産撤退が相次ぐなど産地衰退の危機にある。茶(リーフ)は若年ユーザーの開拓が喫緊の課題。購買層の高齢化に対して各社策を講じるも打開は容易ではなく、粘り強い取り組みが求められる。

各品目・業種ともそれぞれに課題を抱えているが、食品業界を覆う分厚い雲を薙ぎ払うのは、現状に立ち向かう各社の知恵、そして新たな施策にチャレンジする勇気に他ならない。雲外蒼天――雲の向こうには一面の青空が待っている。

(1月3日付本紙に各カテゴリーの天気予報掲載)