「冷凍食品はこれから人口が減少しても成長が見込める有望市場。当社は『米飯』と『チキン』を戦略カテゴリーに位置付け、さらに需要を深掘りしていく」と話すのはニチレイフーズの奥村剛飛マーケティング部長。
また「冷凍食品の強みは素材から調理品まですべての領域をカバーできること。これは常温・チルドの製品では難しい。手作りをサポート・代替する価値には大きな可能性がある」と展望。
マーケティング事業の支援を行うMCEI東京支部の定例研究会で語ったもの。演題は「冷凍食品マーケット拡大に向けた、ニチレイの取り組み」。
自社について、「冷凍食品事業は業務用からスタートした経緯があり、もともとモノづくりを重視する傾向が強かったが、近年は家庭用のマーケティングにも注力している」と説明。「われわれは歴史的に創業者精神や核となる味を持っていないが故に、物事の価値観を相対化して測ることが多い。業務用ではお客様の反応を見ながらプロの味を追求し、家庭用では手作りよりもおいしいことを目指している」など紹介した。
市販の米飯カテゴリーは「本格炒め炒飯」が代表格。発売以来、22年連続で冷凍炒飯の売上№1を誇る。2017年に単品で売上100億円を突破し、それ以降も二ケタ成長が続く。
「プロの料理人の工程を再現しておいしさにこだわっている。特に販売が伸びたのは経営資源を集中させ始めた15年頃からだ。なかでも16年にラグビー・五郎丸歩選手を起用したプロモーションが飛躍の起爆剤になった」とし、「冷凍食品は購入者と喫食者が一致していないケースが多い。そのため幅広い世代を対象に、双方の認知度・好感度を高める必要があった」と振り返る。
今後に関して「冷凍炒飯はまだ未購入率が高く開拓の余地がある。家庭で炊飯・調理している消費者がシフトしてくることも見込まれる」。
チキンは「特から」がカテゴリーシェア№1の座にある。開発にあたっては、唐揚げ専門店や惣菜製品などを徹底的に食べ比べた。そこから「従来の冷凍唐揚げにはなかった大きさでありながら、お得感ある商品設計を目指した」。17年春の新発売時は店頭配荷率が約80%と圧倒的なスタートダッシュを決め、一気にカテゴリートップに上り詰めた。ネーミングとパッケージもヒットの決め手。「16年以前の商品名はストレートに『若鶏の唐揚げ』だったが、親しみやすいニックネームのような『特から』を採用。パッケージのカラーに江戸紫を使ったデザインも店頭での差別化に一役買った」。
一方、直近における同社全体のマーケティング戦略について言及。「社会的価値と経済的価値の両立を目指す中で、おいしく食べながら健康になれる価値を実現していきたい」との方向性を示し「毎日の食事の中で『こんなにおいしくて健康になれる』『手軽に多様なメニューを用意できてゆとりが得られる』などの価値を構想している。まずは24年春に向け新しいコンセプトの一端を披露できれば」と話す。