九州エリアの食品小売業界では、昨年度はコロナ禍の緩和で売上高は増収を計上する企業が増えた一方、増益.黒字転換はおおむね半分にとどまった。とくにDSやDgS、百貨店が好調だったのに比べて食品SMや生協、HCなどは収益改善が遅れた形となった。その後は食品インフレで消費者の節約志向が高まるなか、経営環境は厳しい状況。一方で百貨店はコロナ明けの反動などが重なり、好調をキープするなど消費の二極化が進んでいる。
ここで主要流通企業の2022年度の決算実績をまとめた。今回は新会計基準の導入によって売上高ランキングが変動した。売上高(営業収益)ではコスモス薬品が8千276億9千7百万円で12年連続で首位となった。昨年と同じく2位のトライアルHDが6千681億2百万円、3位はイオン九州の4千844億6千6百万円、4位はダイレックスで2千885億1千1百万円となった。前年5位だったイズミ(九州地区)は新基準で2千256億円から1千159億6千5百万円に縮小し8位に後退した。
経常利益では売上高同様、コスモス薬品が対前年比0.7%の微増ではあるが、330億8千6百万円でこちらも12年連続の首位。2位はダイレックスが11.2%増の138億5千4百万円、3位は6.2%増のトライアルHDの134億7千5百万円と続いた。今期は価格改定により粗利益率が改善される小売企業が増える見通しとなっているが、買い上げ点数の減少が生じていることからどれだけの回復が見込まれるかは不透明な状況となっている。
九州エリアでは小売流通企業各社が昨年に引き続き年末商戦に向けてリベンジ消費などの取り込みに努めているが、ガソリン価格の急騰に伴う物流費・原材料費の大幅増や電気代の大幅な値上げに伴うコスト負担の増加、メーカー側からの相次ぐ値上げが続いている。加えて10月から最低賃金が改定されて流通企業各社はパートやアルバイトの時給を引き上げた。売上の伸びが停滞してきている中、時給の引き上げは収益を圧迫し中堅以上のSMでは年数億円の負担増になると試算される。慢性的な人手不足問題に向き合いながらオペレーションの質の維持や各社における店舗作業の合理化などの生産性改善が一層求められている。
今年は域外組のロピアが市場に参入。6月に1号店の博多店を皮切りに、8月に新宮店、10月に北九州リバーウォーク店、11月には筑紫野シュロアモール店をオープンするなど立て続けに出店した。対して地元に古くから根付いている小売業などは年々シュリンクを続けている市場環境の影響を受けて厳しい経営環境に直面している。
九州エリアでは人口減を受けて小売市場のシュリンクが加速する一方、オーバーストアに起因する価格競争が継続するものと想定される。業態間における競争が激化する様相を呈しており、コロナ禍をきっかけに小売流通企業各社では自助努力が求められている。企業間における収益格差がより広がりをみせていることで、業界再編の流れがより加速する可能性が高まることも十分に考えられる。
恒例の「九州小売流通特集」(12月4日付本紙掲載)では今後の見通しを踏まえて、九州各エリアの主要流通企業の詳細についてお伝えする。