米粉の消費拡大 すそ野に向け提案強化 日本米粉協会 武内秀行副会長

食料自給率向上を図るべく新規需要米を使った米粉の利用促進がスタートし14年が経過した。大規模な予算を投じて巻き起こった官製ブームは収束したが、その後、紆余曲折を経て、22年度の需要量は過去最高の4万5千tを記録するなど米粉市場は再び上昇基調にある。日本米粉協会の武内秀行副会長(みたけ食品工業会長)に米粉市場の現状と展望を聞いた。

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米粉は2018年頃から食味改良用途の副資材として製パンや天ぷら・から揚げ粉などへの利用が進むとともに、小麦アレルギー対策で商品化が増え始めたことから新たな需要が見いだされた。原料米の不足により一時は需要が生産量を上回る逆ミスマッチ状態に陥ったものの、22年度の需要量は過去最高の4万5千tで需給バランスも保たれている。

当初は規模を問わずあらゆる企業がこぞって米粉市場に参入したが、残るべき1次加工企業は市場に定着している。当協会でも1番(菓子・料理用)、2番(パン用)、3番(麺用)の用途別基準を設け、粒度や澱粉損傷度、アミロース含有率、水分含有率、グルテン添加率などを規格化した。これまで米粉の製造販売に携わったことのない企業が取り扱えるよう、比較的幅をもたせた数値にしている。規格値を厳格にすると小規模の事業者が米粉を扱えなくなることになるからだ。事業者の規模は大小様々で、大と小企業では導入している装置のスペックもかけ離れている。いずれ規格を見直す機会も必要とは思う。

米粉は飛躍のチャンスを迎えている。現在のユーザーには小麦粉製品が店舗の棚から消えた時に置き換えで売られていた米粉製品を購入した人たちが多い。この新規ユーザーが定着し、22年度は4万5千tという需要量に到達した。グルテンフリーが話題になり米粉の良さに気づいたユーザーは少なくない。大半のスーパーマーケットが米粉パウダーや米粉を使った製品を販売し、PB製品も増えている。10月期の輸入小麦価格は引き下げられたが、このリピーターを大事にできれば年々5千tずつでも需要は拡大するだろう。

米粉ビジネスの黎明期のような政府が莫大な予算を投じて普及促進をするようなことはもはや望めない。農水省では米粉の消費拡大を狙いに8月から俳優の小池栄子さんを起用したTVCMや期間限定での交通広告、YouTubeでの動画配信などを展開している。地道なPRを継続し、需要を掘り起こしたい。

現在、需給マッチングはバランスがとれている。次はいかに消費を拡大できるかがカギだ。当協会では一昨年、昨年とスイーツレシピコンテストを実施し、すそ野のユーザーに向け冊子を配布した。全国のABCクッキングスタジオでは本年度から米粉を使った講座を開始し、大変好評だ。当協会とのタイアップによる米粉を使用したメニューも開発している。当協会主催によるベーカリー対象の製パン講習会も盛況で、一級製パン技能士の講師が小麦粉に米粉の良さを加えたハイブリッド方式の製パン方法をレクチャーしている。

来るべき時に備えて1次加工メーカーも新工場を建設するなど生産キャパの拡大に取り組み始めた。市場は拡大し、各社とも成長していることはありがたい。使ってもらって初めて米粉の良さが分かる。

今後はアレルギー対策だけでなく、製パン工程では発酵が1回で済むなど時短・簡便につながるメリットも訴求していきたい。