今、コーヒー業界では2002年に上陸した「ブルーボトルコーヒー」に代表されるコーヒー第3の波・サードウェーブに続く第4の波・フォースウェーブの到来が言われている。
――本当に到来したのか?
――いつ到来したのか?
――サードウェーブとの違いは?
5月1日、取材に応じたUCC上島珈琲の長瀬智子取締役営業統括本部特定営業部部長はこのような疑問にこたえる前に、国内のコーヒー消費環境について「世代によって捉え方が全く異なっている」と指摘する。
22年実施のある消費者調査によると、例えば“サステナブルの要素は購買動機になりうるか”の設問では、40、50代から“なり得ない”の回答が多く寄せられた一方、20代はほぼ全員が“購買動機になり得る”とこたえたという。
また、長瀬部長の所属部署で約2ヵ月前に実施した調査をもとに「喉が渇いているからアイスコーヒー、ホッとリラックスしたいからホットコーヒーというのが一般的な感覚だと思っていたが、20代はカフェインを摂りたいからという理由で飲まれる。カフェインについては他社も着目して新製品が発売されたが、世代によって捉え方が異なり全体の動向だけを見ていると見誤ってしまう」とも述べる。
このような世代で異なる多層的な嗜好が、そのままフォースウェーブにも当てはまるという。
「フォースウェーブに“これだ”という明確な定義はないが、“多様さ”というのはおさえておきたいポイント」とする。
その中でフォースウェーブの大きな兆候として、生産地を含めサプライチェーンを知らしめるコーヒーを挙げる。
「シングルオリジンや認証コーヒーとも異なる。サステナブル意識の高まりから、コーヒーの調達から製造に至るまで、“透明性”を意識される方が物凄く増えてきた。今はネットで様々な産地の情報が得られることから、産地の取り組みなどに対して“自分もコミットしたい”“一票投じてみたい”という気持ちが強くなっているのだと思う」との見方を示す。
この動きはコロナ禍で加速したという。
「一時期コンテナが来なくなりサプライチェーンが脅かされたことで、サプライチェーンやバリューチェーンに対する関心は一気に高まっている」とみている。
アメリカでは、生産者の顔が見える製品や産地とのダイレクトトレードを謳った製品がスーパーで散見されるという。
このような流れを受けて、NPO法人IWCA(国際コーヒー女性連盟)日本事務局長の顔も持つ長瀬部長がUCCグループの製品の中で期待を寄せるのは、19年に発売開始した家庭用レギュラーコーヒー「ヒルス ハーモニアス ホンジュラス ウーマンコーヒーブレンド」と20年に発売開始した業務用レギュラーコーヒー「ホンジュラスWOMEN’S COFFEE」。
家庭用レギュラーコーヒーアソートの「UCC 珈琲探究 ワンドリップコーヒー バラエティパック12杯分」にも、期間限定で「ホンジュラス ウーマンズコーヒーブレンド」が1杯分含まれている。
いずれも、ホンジュラス西部のオコテペケにある組合に所属する女性生産者が栽培したコーヒーを使用したもので、売上の0.5%をIWCAに寄付しIWCAの活動を支援している。
この中で特に引き合いが強まっているのが業務用で「女性が生産しているというよりも、サステナブルの観点で、多くある認証珈琲とは異なる新しい切り口として喫茶店や独立系のレストランなど業務用での採用が広がっている」と語る。
IWCAは03年にコスタリカで設立。ネットを使った女性が働く小規模農家とバイヤーの橋渡しほか、世界33ヵ所にある支部のスタッフが産地を訪れ、生産効率を高めるための技術指導やパルパーなどの設備を提供している。
15年には長瀬部長が旗振り役となり、消費国としては初となる日本支部が設立。日本支部では、毎年秋に開催される日本スペシャルティコーヒー協会(SCAJ)での啓発を活動の柱としている。SCAJでは過去、女性生産者にフォーカスした映画を上映してきた。
なお、サードウェーブは1 杯ずつ丁寧に抽出する日本の喫茶文化が海外のカフェ文化と融合・進化して逆輸入されたと言われている。
高付加価値のスペシャルティコーヒーへの注目が高まり、コーヒー豆本来の香りや味わいを最大限に引き出すために豆の質や焙煎方法、抽出方法などにこだわった現在も続いている動きとなる。