マスクの着用が緩和されたものの、通勤電車や街中の様子をみると外している人は少ない。これには同調圧力に加えて、コロナ禍の約3年間で染み付いてしまった「マスク着用は当たり前」という習慣化が大きいように思う。
▼一度、習慣として根付いてしまうと重石のように固定化され、ちょっとやそっとの力では動かない。行動変容を促す新商品がなかなか定着しないのもそのためで、習慣を変えるのは至難だ。
▼これは静止摩擦力と動摩擦力の関係に似ている。物体が動き出す前と動き出した後では摩擦力の大きさが異なる。動き出すと摩擦力(動摩擦力)は小さくなる一方、動いていない物体を動かし始める(静止摩擦力)には大きな力を要する。したがってマスクの必要性を感じている人は別として、流されて着用している人たちの行動様式を変えるには大きな力がいる。
▼食品業界においてメーカー値上げは昨年大きく動き出した。大多数の小売の理解を得て動摩擦力に変わり、この流れは今後も続くとみられる。これに伴い賃上げも今大きく動き始めようとしている。