前身の寿屋創立から今年で102年となるサントリーでは、ソーダなどで割って飲む「ビアボール」を昨年に投入し新需要を開拓。機能系ビール「パーフェクトサントリービール」(PSB)も昨秋の刷新で勢いづく。そして今春には、プレミアムビール市場を牽引する「ザ・プレミアム・モルツ」を全面刷新。ビール参入から60周年を迎える今年も、あくなき挑戦を続ける。
「サントリーはこれまでも失敗を重ねながら、画一的ではないビールの楽しみ方に挑戦してきた。63年に寿屋からサントリーとなり、ビール事業に再挑戦してから60年の節目。勝負の年にファンを増やすべく全社一丸で挑戦する」。12日の事業方針説明会で、鳥井信宏社長が宣言した。
業務用の回復が進んだ昨年のビール市場は、前年比推計114%。同社の出荷数量は126%と市場を上回った。
21年発売のPSBは、10月のリニューアル後、業家連動施策が奏功し、伸びが加速。「ビアボール」も業務用に続き11月からは家庭用を発売。20~40代の支持を得て、ビールの可能性拡大へ手応えをつかんだ。今年は、ビールカテゴリーにマーケティング投資を集中。発売20年を迎える基幹ブランド「プレモル」を全面リニューアルする。
華やかな香りと深いコクをより高めるため、素材や製法を見直した。
「重要原料であるダイヤモンド麦芽は香りに強い特性があり、皮の部分にそれが多く含まれることが分かった。日本の精米技術に着目し、皮だけを取り除くことで『磨きダイヤモンド麦芽』を生み出した」(常務執行役員ビールカンパニー生産研究本部長・川崎慎吾氏)。コクを高め、アロマホップの華やかな香りを一層楽しめるようになったという。
「プレミアムに求めるお客様の価値は時代とともに変遷。選ぶ際に重視する点も、外面的なステータスから内面的な自信と誇りに変わってきている」(取締役常務執行役員ビールカンパニー社長・西田英一郎氏)とみて、パッケージも装飾的なものから、しなやかさや躍動感を感じられるデザインに刷新。プルタブにブランドカラーのブルーを採用した。
プレモルブランドでは、新規ユーザーが拡大する「香るエール」、“最高峰”と位置付ける「マスターズドリーム」も刷新。計3品を2月28日からリニューアル発売する。
コロナ禍で外食の特別感が増すなか、「神泡品質」の飲食店から魅力を伝えるコミュニケーションを強化。昨年から再開した工場見学や、オンラインで展開するバーチャル型の「冒険型ビール工場体験」を通した品質訴求活動にも取り組む。
今年のビール販売計画は、家庭用・業務用合わせて前年比121%。
「(近年の傾向として)定番が前年を超えづらく、限定品、新製品が全体を押し上げている。定番であるプレモルのリバイタライズで、市場を上回ることを目指す」「10月には酒税改正(ビール減税・新ジャンル増税)もあるが、今の物価高、給料が上がらないなかでアゲンストのカテゴリーになる可能性もある。しっかり市場を見ながらやっていきたい」(西田氏)。