瀬戸内海で養殖カキが甚大な被害を受け、生鮮市場だけでなく加工メーカーや流通にも影響が及んでいる。こうした中、従来の養殖方法とは異なるシングルシード養殖法が注目されている。市場が拡大している殻付きのカキを、効率的に生産できるのが強みだ。そのための資材を提供するシーパジャパン(大阪市)は、カキ養殖にとどまらず培養装置など水産養殖全般にかかわる新規事業にも注力する。吉本剛宏社長に業界の現状と展望を聞いた。
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――瀬戸内海では養殖カキに甚大な被害が出ています。その中で、シングルシード養殖が広がっている背景を教えてください。
吉本 今回の大量斃死(へいし)については、生産者や関係者が真剣に対応しているものの、直接的な解決方法はまだ見いだされていないと理解している。海の環境が変わり続けるのであれば、環境に対応できる種苗を人工的に作る必要があり、従来の自然採苗に加え、人工種苗の割合を増やしていく必要がある。
悪影響を与える要因に対し、耐性を持つタネを育てる技術はオーストラリアの業界団体に知見と経験があり、当社の要請により日本の課題解決へ協力する意思を見せている。
海の状況が変わり生産が不安定になっていることだけでなく、後継者などの労働力不足、不安定な価格の問題も指摘されている。
一方、主に飲食業や海外の市場からは「殻付きカキ」が求められている。しかし、従来の養殖方法では、殻付きを生産するには効率面で限界がある。課題に対し危機感を持つ生産者は、高品質の殻付きカキを効率的に生産したいという思いを持っており、シングルシードはそういった需要に応えている。
――殻付きカキが伸びている要因は。
吉本 元々はオイスターバーなどの飲食店から始まり、現在は小売店でも殻付きで販売するところが増えてきた。節約志向の一方で、高品質な食品や産地にこだわりを求めるニーズも強まっている。
殻付きは産地の特徴を訴求しやすく、生きた状態で流通させるので鮮度も高い。オイスターバーでは産地ごとに食べ比べたり、生産者の名前やブランドが表示されたりすることも多い。殻付きは付加価値が高く、差別化を図りやすい。まだ一部の百貨店などに限られるが、将来的にはアサリを買うように殻付きカキを家庭で楽しむようになると期待している。
生産者にとっても、むく労働力が必要なく高額で売れるなら、殻付きを生産することは理にかなっている。(つづく)
