味の素AGFは、共働きなどで日々忙しくしているあまりに親しい者同士でも意外とできていない会話を弾ませる新サービス・商品展開を開始した。
11月20日、発表会に登壇した島本憲仁社長は「コーヒーが不思議と持つ、心を落ち着かせ穏やかにする力を使ったサービス。スマホ片手にではなく、コーヒーを置いて二人向き合って話すことを意図的に作り出す。このようなサービスを導入することで社会に会話が広がるきっかけにしたい」と語る。

新サービスと商品は、社員の実体験に根ざして開発された。
「妻とのLINEを見返すとコミュニケーションというよりも完全に業務連絡のLINEになっていた」と吐露するのは堀遼介さん。
この実態を社内で共有したところ思いのほか多くの共感の声が寄せられたことから「パートナーとコミュニケーションしているつもりになっている方が非常に多いのではないかと改めて思った」という。
堀さんはあるルーティーンを取り入れることで会話を生み出し「夫婦円満」という。この実体験を加味して開発したのが新サービス「KATARAI BIYORI」となる。

LINE友だち登録してパートナーを招待すると、執事のメェープルくんと称するキャラクターが二人の間に立ちLINEでの会話を促していく。基本利用は無料。
1カ月に1度、手紙とコーヒーが入った「語らいセット」の購入(税込・送料別1080円)を提案される。サブスクリプションではないため、その都度購入を判断する。購入しなくてもサービスを受け続けることができる。
「語らいセット」の手紙は2通1セットとなっている。コーヒーを同封した手紙にはLINE上で自ら記入したメッセージが印刷され、1通ずつ渡し合えるようになっている。

飽きさせない工夫として手紙のデザインとコーヒーには複数の選択肢を設けている。コーヒー以外のドリンクも取り揃える。
「KATARAI BIYORI」の利用促進は、パートナーのうち比較的意識が高い人に向けて行っていく。
「潜在的な課題なため伝え方は非常に気を付けていく。どちらかというと女性が関心を持たれると思っており、女性向けのイベントなどでアピールしていく。家族とのコミュニケーションを考えはじめる育休中の男性にも伝えていきたい」と述べる。

40代共働きで小学生の娘を持つ籠谷友紀さんは、仕事や家事・育児に追われ日々駆け足のような一日を過ごす中でも「(夫と)仕事でこんなことがあった、嬉しかった、悲しかったといった会話を重ねていきたい」と願う一人だった。
話しかけようとしても、何のために話すのかという空気が漂い平行線をたどる中で編み出したのが、日常の中に非日常を作り出すアイデアだった。
新商品「ちょっと贅沢な珈琲店」ドリップアソート ムードタイムは、外箱をランタンのように様変わりさせるのが特長。
4つのステップを踏んで家のように組み立て、その底部に2人(台)のスマホをライトを点灯させた状態で入れて室内の照明を落とすと、ほんわりとした灯でイラストが浮かび上がる仕組みになっている。

「灯によって五感が研ぎ澄ませされて落ち着くことができると思う。寝ている子どもを起こさないように電気を暗めにして深い話をした実体験につながり、皆様の心も届くのではないかと考えた」と説明する。
実際に家庭で試したところ効果はてきめんだったという。
「いつもは『うんうん』しか言ってくれない夫が『実は今の仕事、結構やりがいがあって』と話してくれて、プレッシャーやストレスを心配していたが、逆であったことを確認することができた。子どもも自然と会話に入ってきて学校での出来事や嬉しかったことを話してくれた」と振り返る。
同商品は「ちょっと贅沢な珈琲店」プレミアムドリップ2種(うち1種類はカフェインレス)計16袋入りで税別3240円。ECサイトで販売している。

味の素AGFはかねてから商品を通じたコミュニケーションに重きを置いている。今回の新サービスと商品展開もその一環となる。
島本社長は「コーヒーを買って下さいというよりも、会話を生み出すコーヒーのある時間を数多く提供することが社会がより良くすることにつながると社員がみな認識しているからこそ、このようなサービス・商品が生まれてくる」と胸を張る。
「ブレンディ」スティックや「ちょっと贅沢な珈琲店」プレミアムドリップの個包装には気持ちに寄り添うメッセージをデザイン。直近では「ちょっと贅沢な珈琲店」でコーヒーに話しかけるようにドリップする大沢たかおさんのCMを放映している。
「誰かを思い浮かべながら会話をするだけでも私はいいと思っている。そういうことが幸せやウェルビーイングにつながっていく。これからも社内でアイデアを出していき、その結果、コーヒーや嗜好飲料が数多く登場できれば、結果としてビジネスは上手くいくと信じている」と力を込める。


