北海道コカ・コーラボトリングの自販機事業は、飲料自販機市場がダウントレンドにある中、近年成長を遂げ異彩を放っている。
同社は北海道内に約4万台の自販機を設置。設置台数は増加傾向にあり、一台当たりの売り上げも上昇基調にあるという。
8月28日、取材に応じた酒寄正太社長は「実は会社で一番投資をしているのが自販機。人手もかかり、毎年、入れ替えや修繕を行い、目標を達成させるため特に注力しており、そのため、2023年の社長就任以降、組織を変更して、社員がやりがいや誇りを持って働いてもらえるようにした」と語る。
体制を整えて以降、グループ会社がこれまで以上に結束を強め、社会課題や地域課題の解決に貢献しながら事業を推進している。
グループ会社は、北海道コカ・コーラリテール&ベンディング、北海道コカ・コーラプロダクツ、幸楽輸送、北海道サービス、北海道ベンディングの5社。北海道コカ・コーラボトリングとグループ5社で、飲料事業全般と非飲料事業である「グループビジネス」を手掛けている。
「ごく一部の外注を除き、メンテナンスを含めてほぼ全ての事業を当社グループの社員が一体となって取り組んでいる。横との連携や情報共有がスムーズで、例えば自販機オペレーション担当がお客様の課題を伺い、それをすみやかに営業担当につなげて提案するといったことが行われている」と説明する。

飲料事業を軸に据えつつ、グループのアセットを活用し取引先企業のビジネス課題に対応する「グループビジネス」を強化することで自販機の提案力に磨きをかけている。
「単に“自販機を設置してください”と営業したところで“もう間に合っています”と返されてしまっては接点が1回限りとなってしまう。そうではなく、まずロケーション先であるお客様の困りごとを伺い、他のお仕事でつながり、そこでの働きを認めていただくことで、自販機の新規設置へとつなげていく」との考えのもと、営業活動を展開している。
その一例には、グループ会社の北海道サービスによる給与計算等のバックオフィス業務代行サービス、コインパーキングの精算機や券売機等の機材メンテンスサービス、幸楽輸送による物流サービスなどが挙げられる。
前期(12月期)、バックオフィス事業としては、給与計算や会計業務等の事務代行を強化し、人手不足対応への取組みを強めている。他にもコールセンター事業やオフィスや施設の清掃受託も行い、ワンストップで飲料取引企業のお困りごとの解決を進めている。

物流事業ではタンクローリー輸送を強化し、殺菌乳や白油の輸送を拡大。
需要が高まる少ロット輸送への対応としては企業向けの小口輸送サービス「幸楽輸送のエコビジネス便」を立ち上げ、札幌近郊から展開を強化している。
メンテナンス事業においては、自販機のメンテナンスやオペレーション機能を活用し、飲食店の厨房機器や小売店の冷蔵ショーケースの定期点検を展開している。
またLED照明やエアコン空調設備の設置工事なども拡大。機材の調達から設置・修理まで一貫して対応している。
様々なニーズに対応する組織体制は、社員の働きがいにもつながりうる。
「個人宅ではなく事務所を対象にクーラー・空調設備の設置も請け負っている。自販機メンテナンスを担当する社員に、自販機以外の機器に関するスキルの習得を推奨している。自販機は決して成長産業ではないことから、自販機単一でやるよりも、いろいろな技術を身に付けて自身も成長していくほうが、やりがいもあるし楽しいはず」とみている。

本業の飲料事業の一翼を担う自販機事業も、地域が抱える課題や問題の解決に取り組みながら磨きをかけている。
「ボールパークまちづくり応援」「MOOMOO自販機」「こども食堂北海道ネットワーク応援」「ピンクリボン活動支援」などを銘打った53種類・約1900台の寄付型自販機を展開。
医療福祉・教育・環境・スポーツなど地域に根差した幅広い対象団体に売上金の一部を寄付している。
北海道コカ・コーラボトリングは2012年に道内全179市町村と防災協定を締結したほか、北海道と締結した「災害時における飲料の供給等防災に関する協力協定」により、約900台の災害対応自販機を活用した市町村との取り組みを展開している。
災害対応自販機は、災害時には遠隔操作によって機内の飲料を無償提供できるフリーベンド機能を備えている。
能登半島地震を受けて、地域における認知や存在を効果的に訴求することにも注力しており、2024年9月には災害対応自販機の設置場所をグーグルマップでわかりやすく表示したWEBサイトを公開している。
「防災協定を締結してから少し時間が経過したので、当社では今一度、マニュアルづくりや災害時の手順を半年以上かけて整理し直した。また、当社と自治体の双方で担当者が変わってしまっているところもあることから、定期的に訪問して他のニーズをお伺いしながら確認していくことが大事。マップには現状、当社の災害対応自販機しか示されていないが、ゆくゆくは他社の災害対応自販機も示せるようにしていきたい」との考えを示す。
7月30日発生したカムチャッカ沖地震では、日本の広い範囲にわたる津波警報の発令や避難指示を受けて、自治体の要請のもと災害対応自販機から飲料を提供。8月26日に北海道で初めてとなる線状降水帯の予測情報が発表された際も、避難所で災害対応自販機から飲料を提供した。

北海道コカ・コーラボトリングは、1963年1月、大日本印刷(DNP)本社内に創立(当時・北海道飲料)。DNPが北海道コカ・コーラボトリングの議決権を57.02%所有し、北海道コカ・コーラボトリングは、DNPの企業グループの飲料部門として事業を展開している。
1963年3月には、本社を札幌市に移転し、北海道民に寄り添い北海道のために事業活動を継続することをスローガンに掲げ、現在もなお地域に根ざした“どさんこ企業”として持続的成長を目指している。
「我々の活動拠点は北海道であるため、北海道が元気で成長していってこそ、我々も一緒になって成長していけると考えている。北海道は課題先進地域で、社会課題や地域課題が非常に多い。このような課題解決を、飲料を中心とする事業展開で少しでも解決していきたい。大手飲料メーカーの中で道内に製造工場を持つのは当社のみ。その分、社員も多く雇用している。社員の大多数が北海道民で構成され、北海道のために頑張ろうとしている者たちの集まりであるため、地域密着の志向が非常に強い企業だと思っている」と自負する。

2023年の社長就任時に意識したのも課題解決。
「ボトラーの事業というのは、ザ コカ・コーラカンパニー(日本コカ・コーラ)から原液などを購入して製造・販売する非常にシンプルなもの。今後も飲料を中心に事業を展開していく上で、ただ継続するだけでは人口が先細りする中、場合によっては我慢をし続け、コストダウンだけをやり続けるような結果となってしまう。それでは会社としては後ろ向きになってしまうため、増収増益で成長させていくことが大事。成長軸で考えて、地域や社会の課題をしっかり見据えて売り方などを提案していかなければいけない」と力を込める。
酒寄社長が目下気にかけている北海道の課題は、人手不足・環境の主に2つ。
「人手不足対策としては設置をすれば24時間稼働してくれる自販機も1つのツールとなる。環境では北海道や北海道環境財団とともに『北海道e-水プロジェクト』に引き続き積極的に取り組んでいく」と述べる。
2010年に立ち上がった「北海道e-水プロジェクト」は、2009年に北海道との間で締結された「環境保全に関するパートナーシップ協定」に基づき、北海道で水を中心とした自然環境を守り次世代へと引き継いでいくことを目的としたもの。北海道・北海道環境財団との3者協働で取り組み、「い・ろ・は・す 北海道の天然水」(540ml・950ml)の売上の一部を北海道環境財団に寄付している。
寄付金は、2024年時点で累計約1.74億円に上る。毎年1,000万円以上が寄付され、寄付金は、道内各地で水辺の環境保全活動に取り組む団体や流域ネットワークの活動を支援している。
2024年4月には、北海道を応援するキャラクター「雪ミク」を同プロジェクトのアンバサダーに起用し認知拡大を図っている。
本社と隣接する札幌工場で使用している水は、札幌市清田区にある白旗山を水源とする地下水(天然水)であることから、札幌市との「環境事業に関する協定」に基づき長期にわたって白旗山の森づくりが進められている。
「北海道という土地そのものがブランド」という酒寄社長の考えのもと、地元(清田区)の水を使用した「い・ろ・は・す 北海道の天然水」を始めとしたレギュラー製品の他、北海道限定製品の製造も行っている。

「綾鷹」ブランドとして北海道限定は初となる「綾鷹 番茶」を3月に新発売して以降、勢いづいている。
番茶とはほうじ茶のことで、番茶という名称は北海道で定着しており、ご家庭で昔から親しまれよく飲まれている。発売後のSNSなどで20~30代からも好意的な反応があり、幅広い層の消費者からの支持を獲得する結果となった。
その他にもコーヒー飲料では「ジョージアミルクコーヒー」が北海道で最も売れているコーヒー飲料の一つであると胸を張る。
社会課題の解決に貢献し地域に密着しながら企業の成長を図り、1-7月の販売状況は、天候の後押しもあり概ね好調に推移している。

基幹ブランドの「コカ・コーラ」を2025年の最優先営業戦略ブランドと位置付け、北海道の消費者に対して、改めてコカ・コーラの魅力を知ってもらうため、コカ・コーラのマーチャンダイジング活動に注力して、唐揚げなどとのウィズフード(クロスMD)提案や飲食店への提案を全社一丸になって実施している。
来年は中期経営計画(2024年~2026年)の最終年度を迎える。これまでと同様に、飲料ビジネスを中核に、非飲料ビジネスを組み合わせて諸課題の解決に貢献していく。
「自販機を成長領域と位置付け収益の柱にしていく。2030年やその先の成長の基盤づくりとして、来年は札幌工場での大規模な製造ラインへの投資を計画している」との考えを明らかにする。


