変わる思考様式

「家に固定電話があるなんて珍しいね。もしかして、新聞取ってる?」。中3の息子が塾の講師に言われたそうだ。IP電話だし新聞はスマホで読むのだが、今はどちらの家庭も少数派なのだろう。断絶的な生活様式の変化は人々の思考様式も変えた。

▼「自分たちが生きづらいのはなぜだ?そうだ、あいつらのせいだ」という主張は、つい信じたくなる。なぜなら、自らの責任ではないことを肯定してくれるから。国や時代を問わず、この種の言説が定期的に流行する。

▼その標的が「外国人」に向かいつつある今、あやふやな「日本人ファースト」が支持された。だが、いつでもこの国は日本人ファースト。難民の受け入れ数は世界で最低水準。外国人犯罪の検挙数はこの20年で激減。何より日本人よりも外国人が優先される場面が思い浮かばない。語学スクールの求人くらいか。

▼保守思想家のエドマンド・バークは、過ちを犯す存在である人間の理性を信用せず、社会が培ってきた制度を急激に改めることを戒めた。新聞も読まず、YouTubeで初めて政治に触れた人々に振り回される今の社会をどうみるだろうか。