海苔 深刻化する不作 若手漁師ら強い危機感 有明3県協調で打開へ

国内最大の海苔生産地である有明海、なかでも佐賀・福岡の深刻な不作によって海苔業界は2023年の初めから大きな混乱のうちにある。

乾海苔入札の平均単価は3年で倍増し、海苔メーカーらは3年連続で値上げを実施。一部では枚数減など規格変更も余儀なくされ、消費者の海苔離れが懸念されている。

7月3・4日の2日間、若手を中心とした全国の海苔生産者ら70人超が集まり、東京都内で「第9回海苔サミット」を開催。副題は「日本の海苔養殖を未来に残す為に、今をどう生き抜くか」。生産者らの危機感がストレートに表れている。

初日は環境省や東京大学大学院の福永真弓准教授らが講演。2日目は4つのテーマを設けて参加者らが議論した。

1つ目のテーマは「海苔業界を守るための策」。組合員制度の見直し、食害対策、食育などの施策が挙がる中、「生産者が増える取り組みを」との発言に対して、漁業権を持つ夫とともに海苔づくりをしてきた女性参加者が「生産量を増やしたくて漁業権の付与を何度か漁協に求めたが、女性であることだけを理由に私には与えられなかった」と指摘する場面もあった。

2つ目のテーマ「それぞれが考える海苔の適正価格」では、「12~13円」「25~30円」など幅のある価格が示された。「現状を高いとは思わない」「これ以上下がってほしくない」と話す参加者も多く、「言い値での落札にジレンマもある」との声も。商社・生産者の立場や認識の違いが浮き彫りになった。

3つ目のテーマ「日本の海苔を守るため有明海について考える」では、「密植しすぎ」「一期作でもよいのでは」などの意見が出たほか、諫早湾の影響にも複数人が言及。九州から参加した20代のある漁師は、「潮受堤防に近い浜から順に廃業している」という厳しい現状を共有し、「佐賀、福岡、熊本、3県の協力が大切だ。手を取り合って有明海を守りたい」と力を込めた。

4つ目のテーマは「世代を超えた対話を進めるために」。親でもある先輩漁師や漁協のベテラン組合員たちに意見を受け入れてもらう方法を各々の経験から語り合った。

あくまでも「海苔を採りたい気持ちは一緒」だとして、「相手への敬意が不可欠」「提案は具体的に」などのアドバイスが聞かれ、参加者らは課題解決に向けて意欲を高めた。