「ゆかり」の原料となる赤しそは産地で収穫、一次加工(漬け込み)され、広島工場に運ばれる。広島工場は「ゆかり」「かおり」「あかり」「うめこ」の4姉妹をはじめ、「ひろし」「しげき」「かつお」などのふりかけ製品や風味調味料など常温品の主力拠点で、生産額は年間約100億円。
製造アイテムは約300種類、生産能力は日産4500~5000ケース(約200万食)。98年には対米輸出のHACCP認証、2017年にはFSSC22000認証を取得し、小ロット多品種で優れた生産性を実現し、高品質で安全安心な製品を供給する。
良い商品は良い素材からという考えのもと、原材料に徹底的にこだわり、最終製品に仕上げている。品種改良を重ねてきた赤しそのほか、削り節は本枯節など数種類の鰹節を工場内で削り、海苔は専用の機械で焼き上げ、ごまも自社で焙煎するなど、おいしさを追求したモノづくりを徹底する。
2020年には瀬戸内の走島(広島県福山市)に「走島海洋資源開発センター」を建設、「すじ青のり」の陸上養殖を開始。収穫量が減少しているすじ青のりの安定供給を図り、国産100%の「青のり」として販売している。
生産マネジメントでは、デジタルとアナログを活用した「見える化」の取り組みを推進。トラブルやミスを未然に防ぐための仕組みづくりと、作業の進捗状況や原価管理、休暇予定などが一目で分かるよう工夫を凝らし、従業員が前向きに取り組める職場づくりを大事にしている。
例えば、Aラインで余力が発生し、Bラインに手伝いに行く際、同社ではこれを「福の神」と呼ぶ。「行く人も気持ちよく、受け入れる側も感謝を示すことで場の空気が良くなる。(小ロット多品種を可能にする)多能工化の推進にも貢献している」(福田享常務取締役生産本部長)。各工程のポイントや注意点は「名前建て」(共通言語で統一)することで、暗黙知を形式化し、自立的に工場を良くしていく仕組みづくりを推進している。

従業員の特技や個性を生かした「B面活動」もその一つ。イラストが得意な社員が見える化推進キャラクターをデザインし、動画編集に長けた社員が動画マニュアルを作成。キリンの塗装を施したパレタイザー(通称:つみきりん)は工場見学に訪れる小学生に大人気で、人を喜ばせるファンづくりの源泉となっている。
生産管理システムは自社で設計、デジタルを活用した工程管理やトレーサビリティシステムを構築する。「ハチマキ隊」と呼ばれる品質管理担当者が各工程で安全安心を確保し、見える化を推進。情報共有にも努めている。めざうる技能認定制度は設備保全100人体制を目指し、オペレーターとして活躍する女性が機械のメンテナンスを行うなど取り組みが広がっている。
広島工場は来年で設立50周年を迎える。2030年に向けて、さらなる生産性向上を視野に新工場建設も検討している。(つづく)
