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加工食品菓子山陰の食品卸が地元企業の逸品を全国流通 社長自らテキスト作成して刷新した社内研修が結実し組織力強化 えびす本郷
KNOWLEDGE WORK 20260303

山陰の食品卸が地元企業の逸品を全国流通 社長自らテキスト作成して刷新した社内研修が結実し組織力強化 えびす本郷

 山陰地方の食品卸・えびす本郷(鳥取県鳥取市)は組織力を強化して松江の和菓子を中心に地元企業の逸品を全国流通している。

 同社は2005年に“チーム和菓子”を立ち上げ、軌道に乗り始めた08年頃から右肩上がりに売上げを拡大している。

 なお松江は京都、金沢と並び日本三大菓子処として知られる。

 24年の状況について、24年11月26日、取材に応じた渡邉健次社長は「和菓子の伸びは若干鈍化したものの、今も2ケタ近くの伸びをみせている。流通さまからの引き合いも強まり配荷が広域化している。日本には各地に銘菓があるにもかかわらず、売場が画一的になってしまっているのが課題で、売場を多彩にしたいというニーズがある」と語る。

 小売企業専用のオリジナル和菓子の依頼も増えているという。

 和菓子のスーパーでの定番化や導入拡大にあたり立ちはだかるのが物流問題。松江市の和菓子屋は、後継者が存在し設備投資に積極的なところとそうでないところと二極化している。

 EOS発注から納品まで、流通菓子と同様の対応ができている和菓子屋も一部で存在するが、多くの和菓子屋は受注から納品までの仕組みづくりが道半ばという。

 えびす本郷は、流通の仕組みが整っていない和菓子屋と小売企業との橋渡し役も務める。

 「小売企業さまからすると、個々のメーカーさまと口座を開設されると商品管理が煩雑になる。当社が複数のメーカーさまの商品を一括して卸すことで煩雑さを解消し、急なオーダーにも対応することでメーカーさまにも重宝していただいている」と説明する。

 同社は現在、「地元の食に関するメーカーさまをできるだけ表舞台に立たせるように、スーパーさまに地元商品を紹介させていただく」との考え方のもと、和菓子屋を中心に約100社の地元企業の逸品を扱っている。

 物価高騰によりメーカーも卸も価格改定を余儀なくされるなど、業界を取り巻く環境は一層厳しくなっていると渡邉社長は指摘する。

 「価格改定という大きな仕事をクリアしていかないと生き残れない状況。価格改定の流れが滞ると収益が確保できなくなる。物価高騰に人件費上昇や人手不足などを加味すると、経費に見合う利益を出していかないと企業が存続できない」との危機感を抱く。

 厳しさが増す中、同社は組織力でカバー。

 「部署横断のコミュニケーションが深まり、仲間意識が強固になってきている。会社の将来を担う16人程度の各部門の責任者が中心となり、自分たちの会社という発想から経営者意識が見受けられ会社の雰囲気が物凄く変わった。昔は社員からほとんど発言がない会議だったが、最近は他部門の数字への質問や方針を質す声がよく上がるようになり良い傾向だと思っている」と述べる。

 これには社内研修にメスを入れたことが奏功した。

 「社内研修を外部講師に依頼していたが、会社の中が上手くいかず、何が原因かなと思ったときに、やはり私の声で話をしてこなかったから上手く回らないことに気づき、私がやるしかないと思い立ったのがきっかけ」と振り返る。

 コロナ禍に渡邉社長が自らカリキュラムとテキストを作成して社内教育と社内会議を刷新。以降、毎月1回、物流会議を開催して営業部門と物流部門の社員が一堂に会し、いかに経費を削減していくかという話し合いを継続している。
 非上場企業でありながら、損益計算書など社内の数字を社員に開示したことで「数字で話ができるようになった」という。

 損益計算書の理解はファーストステップであり、そこから改善策を考えられるようになるには、さらに研鑽を積む必要があるという.
 「数字の開示は父親から大反対されたが、全社的に事を考えられる社員が必要であると考えて反対を押し切った。最初の頃は、損益計算書が外部に流出するほどのレベルだったこともあったが、これも会社が悪いと考え、損益計算書の読み方から教えて、次第に経営に参画するという意識が芽生えていった」と語る。

 物流についてはパートナーの物流会社との密な話し合いの結果、物流の効率化に向けて、えびす本郷の倉庫の一部敷地を物流会社に賃借し、物流会社の営業所として登記するという妙案が浮かび実現に至る。

 これにより、物流会社の従業員の通勤時間を短縮。これまで、物流会社の従業員は一度、物流会社に出社してからえびす本郷の倉庫に向かっていたが、えびす本郷の倉庫内の営業所に直接出社できるようになり「時間という戦いの中で、一人当たり1時間から1時間半くらい短縮できている」という。

 現在、同社が抱える課題は採用。

 「つつがなく採用できる魅力ある会社にしていくことも大きな課題。独自の食の地元卸としての機能を発揮し地域のメーカーさまや小売企業さまのために少しずつ実績を積み重ね、育成し始めている新しい取り組みも視野に入れている」と意欲をのぞかせる。

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