9.6 C
Tokyo
8.9 C
Osaka
2025 / 12 / 07 日曜日
ログイン
English
流通・飲食小売進む「脱・歳暮化」 自家需要に活路 ご褒美、ご馳走品を充実

進む「脱・歳暮化」 自家需要に活路 ご褒美、ご馳走品を充実

2023年のギフト市場規模は10兆円超と言われる。だが中身をみると、企業間の中元・歳暮など儀礼的要素が強いギフトは縮小傾向。家族や友人に贈るパーソナルギフトが好調に推移している。そのパーソナルギフト自体も近年は伸び率が鈍化していることから、取り寄せや自宅消費などセルフユースに向けた商材に注力して巻き返しを図る動きがみられる。

大丸松坂屋百貨店では今期、頒布会システムを活用した「おいしい定期便 月イチごほうび」をオンライン限定で初展開した。毎月異なるメーカーのスイーツや総菜を3か月連続で届ける。「GOHOUBI(ご褒美)」のタイトルで、22年の歳暮商戦から展開するカタログの一企画として販売した。

GOHOUBIカタログでは今夏の中元商戦で人気のスイーツなどを販売して前年売上を上回った。また「当企画商品は、オンラインストアからの注文が半数を上回っていることも特徴」(同社)。中元、歳暮利用者以外の新たな顧客層の流入がうかがえるという。

近鉄百貨店では、鍋物や年末年始のパーティーメニューを強化した。コロナが5類に移行した昨年の歳暮商戦で鍋の具材セットを増やしたところ、前年比3割以上伸びた。今歳暮では販売アイテム数を増やし、専用特集を組んで展開する。「今年の年末は最大で9連休。円安や物価高もあり、旅行に行かず自宅で過ごす人が増え、『ご馳走』需要が伸びる」と予想した。

百貨店が中元、歳暮商戦で自家需要を強化するのは、市場縮小に危機感を募らせるからだ。ギフト市場全体が拡大するなかで、好調なのは気軽な贈り物や手土産といったカジュアルギフトであり、中元、歳暮市場は年々3~5%減少している。「『のし』利用の儀礼ギフトは低下する一方、パーソナル需要は好調。物価上昇が継続して、法人を中心とした贈り先の精査はより進んだ印象を受ける」(ジェイアール東海髙島屋)。百貨店のMDを生かした差別化商材を充実することで売上の底上げを図る。

また中元、歳暮商品の利用用途を広げる動きも活発化している。カタログでは近年「歳暮」「中元」のタイトルが消えつつある。「新たな顧客を取り込むべく、昨年から『冬の贈りもの』に変更。よりパーソナルな需要を意識したカタログに再構築した」(同)。

阪急阪神百貨店でも、今夏の中元で「のし」の選択肢を増やしたところ、「暑中見舞い」や「残暑見舞い」が多く見られた。「中元、歳暮とわれわれが決めるのではなく、利用シーンを広げる商品、仕組みづくりが大切だと感じた」という。「脱歳暮」に向けた様々な切り口によって、市場浮上の活路を見いだそうとしている。

関連記事

インタビュー特集

日清オイリオ久野社長 価格改定の早期完遂目指す 家庭用、中長期視点で強化

日清オイリオグループの久野貴久社長は、喫緊の課題として価格改定の早期完遂と、ホームユース(家庭用油)の販売強化に取り組む方針を示した。

J-オイルミルズ春山社長 次元の異なるコスト環境 油脂、価格引き上げ急ぐ

J-オイルミルズの春山裕一郎社長執行役員CEOは、油脂のコスト環境が悪化する中で、「価格改定の浸透を急ぐ」方針をあらためて強調した。

新潟・葵酒造、2年目は自社栽培米で仕込む 「Domaine Aoi」始動 「日本酒になじみがない方にも」青木代表

「飲むことで幸せを感じられるような日本酒を提供していきたい」と話すのは葵酒造(新潟県長岡市)の青木里沙代表取締役。昨年冬、JR長岡駅からほど近い場所に位置する創業160年超の旧高橋酒造から事業を引き継ぎいだ。

カゴメ次期社長 奥谷晴信氏 国内、新たな成長軸を模索 国際、M&Aも視野に成長を

カゴメの次期社長(2026年1月1日付)に内定した奥谷晴信現取締役常務執行役員(一部既報)。アジア事業カンパニーやグローバルコンシューマー事業部、国際事業本部などキャリアの多くを国際事業に携わってきたが、21年以降は国内事業でも手腕を発揮。

ウーケ 花畑佳史社長 パックごはん、第4工場が来春本格稼働 国内外に新規拡大増やす

利便性と品質向上により、年々市場を拡大するパックごはん。最近はコメ価格高騰の影響や防災食への利用増加が相まって、需要はさらに伸びている。