「アイスの実」「ポッキー」とコラボも
うんちく不要、いつでも自由に楽しめるカジュアルワイン。日本の食卓でそんなポジションを築き上げてきたのが、ワラビーのラベルでおなじみのオーストラリアワイン[イエローテイル]だ。サッポロビールが国内発売を開始してからこの9月で20周年を迎えた。新メッセージに「こころ跳ねるおいしさ。」を掲げるコミュニケーションを4月から展開している
「[イエローテイル]は、おそらく世界でも初めてワイン初心者に向けて発信したブランドだ」。そう説明するのは、ワイナリーとして同ブランドを世界展開する豪カセラ・ファミリー・ブランズ社で、アジア太平洋地域の販売責任者を務めるジェームズ・ウィルソン氏。
[イエローテイル]は01年に米国で発売。これまでになく飲みやすいワインとして、瞬く間に全米№1の輸入ワインブランドに躍り出た。これを機に世界の市場から引き合いが相次ぎ、04年には日本初上陸。気軽に手に取れるリーズナブルな価格帯で家庭に浸透し、豪ワインで国内販売首位のブランドに急成長した。今年も8月まで前年同期比106%(金額ベース)と安定成長を続けている。「日本ではまず4品種からスタートして、消費者の好みやトレンドに合わせてポートフォリオを増やしてきた。そのときに徹底追求したのは、カラフルでカジュアル、そして飲みやすいワインだった」(ウィルソン氏)。
品種やテロワールによる違いの伝達に重点を置く多くのワインブランドとは一線を画し、消費者の心に直接訴えかけるコミュニケーションを大切にしてきた。
「この20年を振り返って、継続してきたことは2点ある」と語るのは、サッポロビールで同ブランドを担当する當間春輝氏。
「ひとつは彼ら(カセラ社)のマーケティング方針を理解したうえで、[イエローテイル]の自由なイメージを日本で伝えるためのコミュニケーション。そして2年に一度ほど通年商品を追加しながら、ブランドの強みを広げてきた」。
現在のラインアップは16SKU。日本のワインの飲み方にはまだ広げられる余地があるとみて、もっと気軽な楽しみ方を提案していきたいと語る。
「最近、日本で増えている小さなワインバーでは、若い女性が気軽にワインを楽しむ光景を何度か見かけた。またコロナ禍を経て家飲みの文化も浸透し、私たちのチャンスも広がったと感じる」とウィルソン氏。
近年はアウトドアとの取り組みを強化。新たな飲用シーン“キャンプワイン”を提案している。また今年6月には「アイスの実」(江崎グリコ)と一緒に楽しめるオリジナルマドラー付き企画商品を数量限定で発売したのに続き、需要が高まる11月には「ポッキー」とのコラボ企画も予定。ワインとしてはこれまでにない提案で、[イエローテイル]の自由で楽しい世界観を伝える。
「『ワインは知識がないと楽しめない』と思われがち。そんなハードルの高さを、エントリーブランドとしていかに下げられるのか。甘いだけではない、飲みやすいワインがあるということを伝えられれば、まだまだチャンスはある。今までにない[イエローテイル]らしい発信を続けたい」(當間氏)。