訪日外国人客数が過去最多ペースの中、消費の現場に変化が起きている。コロナ期間中に海外で日本の食文化への関心が高まり、円安の効果もあって高額品に熱い視線が注がれる。
▼外国人に人気の某地方都市。玄関口となるターミナル駅に直結する百貨店では日本酒の売場をインバウンド向けに一新。高級酒を好む傾向にあることから、店頭には酒米を極限まで磨いたプレミアムなお酒や外国人が醸造したストーリー性のある希少酒などが並ぶ。
▼なじみのない銘柄が増えた品揃えに対し、地元の一部常連客は不満を漏らす。外国人富裕層は1万円以上の酒にも手を出すが、多くの日本人はギフトでも尻込みする。代わりに棚落ちした清酒メーカーからは「生活者のニーズに合っていない」と恨み節も。
▼賛否両論の状況だが、酒どころに本社を置く地場問屋の幹部は「チャンス」と話す。「伝統的な酒蔵には世間に知られていない魅力や価値がまだまだ眠っている。それらをうまく引き出してどう表現するかがカギ。外国人に喜ばれる商品づくりをサポートしていきたい」と知恵を絞る。