日本酒 海外需要が新局面 輸出復調もまだら模様 訪日客需要は急増

日本酒の海外需要が新たな局面を迎えている。財務省貿易統計によると、上期(1~6月)の日本酒輸出額は1.9%増と前年クリアしたが、22年は下回った。アメリカが市中在庫の解消で37%増と復調したものの、中国は景気減速に諸問題が重なり17%減と低迷が続く。一方、訪日客が過去最多ペースで推移する中、日本酒の免税売上が急増している。牽引するのは高級酒だ。羽田空港関係者は「海外で日本酒の認知が高まり、より良いお酒を求める外国人が増えている」と話す。

獺祭、白鶴など免税売上が拡大

日本酒の輸出額は23年、14年ぶりに前年割れとなり、今年は再び成長軌道に戻れるか注目されている。各国の状況は様々だ。アメリカは過剰在庫の消化に手間取った昨年から状況が好転。インフレの影響を受けつつも、現地の需要は堅調との見方が多い。中国については昨年来の景気低迷に処理水問題、それに伴うとみられる通関手続きの遅れが重なり動きが鈍い。

旭酒造の清酒「獺祭」は、1~6月の輸出額は主力の中国が伸び悩んだもののアメリカや韓国が好調で前年クリア。また免税売上はブランド力を強みに9割以上増と好ペース、輸出とのトータルは2割以上増となった。同社は「コロナ禍では人の移動がないことで現地の日本食市場がバブルになっていた。その状況には戻らないことを前提に各国の需要を開拓していく」と展望する。

白鶴酒造の1~6月の清酒輸出額は約4割増。前年苦戦した北米が従来の出荷ペースに戻った効果が大きい。欧州も回復傾向が顕著とする。また免税売上が前年比3倍以上と好調。特に高級酒が伸びているという。「当面は現在の市場環境が続くと予想。インフレなどが海外需要に与える影響を注視している」(同社)。

宝酒造インターナショナルの1~6月の清酒輸出実績はプラスだった。なかでも前年縮小したアメリカが急回復。スパークリング日本酒「澪」のレギュラー品が順調で、新商品「澪 CRISP」が上乗せした。なお同ブランドは43か国(23年12月時点)に展開。韓国は「昴」が大手量販店に新規導入され伸長、中国も前年クリア。

空港で高級酒が人気に

訪日客が過去最多ペースで推移する中、日本酒の免税売上が急増している。成田国際空港旅客ターミナル内で店舗運営するNAAリテイリングは「従来は日本から海外出張する際のビジネスユースが目立ったが、近年は外国人の購入が明らかに増え、ブランドの指名買いも多い」と話す。羽田空港第3ターミナルでは、日本酒の販売実績がコロナ禍前の2倍以上と好調だ。免税店を運営する日本空港ビルデングは「日本酒に対する関心の高まりを感じる。輸出に注力するメーカーらが世界中でプロモーションしてきた効果では」とみる。

両空港に共通するのは「従来に比べプライスラインが上がってきた。10万円クラスの高級酒が売れることも珍しくない」。「獺祭」「久保田」「八海山」など国内外で認知度の高い銘柄だけでなく、原料米や製造法にこだわったストーリー性のある商品も人気だという。

NAAリテイリングは「円安の効果はあると思うが、外国人にとっても決して安い買い物ではない。日本文化への関心とともに、メイドインジャパンの信頼も感じる」。