「スプリングバレー」ブランドでクラフトビール市場を牽引するキリンビールは、東京・代官山のブルワリー併設型店舗「スプリングバレーブルワリー東京」を5月30日からリニューアルオープンした。
クラフトビールの市場規模は昨年までの3年間でほぼ倍増。国内ブルワリー数も増加を続ける一方、同社の調査ではビール類ユーザーの約8割がクラフト未体験だという。
「市場のポテンシャルはまだ非常に高い」と語るのは、同社でクラフトビール推進プロジェクト主査を務める牧原達郎氏(5月27日「リニューアルお披露目会」で)。
「聞いたことがあるけど、なんとなく手が出ないという『興味層』は約1千800万人と推測している。この層には『生活を豊かにしたい』というニーズがある」。様々な生活シーンで自分らしく過ごせる時間を提案することに、裾野拡大へのチャンスがあるとみている。
15年の開業以来初となる今回のリニューアルでは、館内の構成をがらりと変更。フロア別に体験内容を分けた点が大きな特徴だ。
1階では、初心者向けに多くのラインアップから選べる楽しさや様々なコンテンツを展開している。
また、非日常を感じさせる落ち着いた空間の2階では、ファン層に向けてコース料理とともに多彩なビールを提供する。店舗でしか飲めない限定ビールも用意した。
ビール業界 「ブランドの物語」発信に力
ビール業界では今年に入り、ファン獲得に向けたブランド体験拠点の拡充を加速させている。
アサヒビールは、日本初の没入型ビールコンセプトショップ「SUPER DRY Immersive experience」を東京・銀座にオープン。サッポロビールは、「ヱビス」発祥の地である東京・恵比寿に開業した「YEBISU BREWERY TOKYO」からブランドの歴史を発信。サントリーは「ザ・プレミアム・モルツ」の挑戦の歴史を担ってきた武蔵野工場(東京都府中市)の見学ツアーをリニューアル。ものづくりへの思いを伝える。
酒税減税を追い風にビール復活の機運が強まる一方、若い世代を中心としてビールを手にする機会が少なかった層の共感を得ることも課題だ。商品そのものの味わいだけでなく、ブランドの背景にある物語を体感できる接点づくりの重要性が増している。