物価上昇による節約志向が高まる中、プラントベースフード(PBF)は植物性のコンセプトを追求するため、将来性を見込みながら、一般の加工食品と比べて2~3割高の価格を保ち、厳しい商戦に挑んでいる。最近はチルドなどデイリー食品にも普及したことで、一つの転機を迎えている。
大豆ミートやカレー、パスタソース、冷食など家庭用のプラントベースフード(PBF)は、植物性素材とエシカルやサスティナブルなどのコンセプトを訴求しながら、主に食卓用に展開してきた。だが、ここにきてミルクやアイスクリーム、ヨーグルトなどチルドやデイリー食品にもPBFが登場したことで、マーケットは大きな転機を迎えた。
大豆ミートや調味料系のPBFは、主に主婦層を対象に展開され、売場もスーパーの食肉売場や惣菜売場、ECチャネルなどを主流に売られてきた。最近はミルクやアイスクリームなど日配のPBFが開発されたことで、Z世代など若年層への広がりをみせ、チャネルでもコンビニへの浸透が期待されている。
健康への関心はシニア世代も若年層も高いが、環境やサスティナブルなどへの関心は、最近では特に若年層に広がっている。ある調査によれば、PBFの購入動機として、高年齢層は「健康のために植物性の食事を」と答えているが、若年層は「商品の魅力」とともに、「環境にやさしい」ことをあげていると言う。流行に敏感な若年層は、新製品や新しい技術には敏感に反応する。しかも様々な栄養素を含むPBFを食べることで、環境問題や温室効果ガスの排出削減にもつながるとなればなおさらだ。
ややもすると敷居が高かったPBFだが、ミルクやアイスクリーム、ヨーグルトなど身近な食品のPBFが出回ってきたことで、購入世代もチャネルも売場も大きな広がりが出てきた。アイスの新製品では「プラントベースフード」ではなく、「植物性」とうたっており、PBFの転機とも言えそうだ。
一方、外食向けのPBFは、多くのメーカーがインバウンド需要を照準に定めている。コロナ禍からの回復を経て、訪日外国人旅行者数は過去最高を更新する見込みも出ており、PBFには今までにないフォローの風と言えそうだ。円安も重なり、外国人旅行者は都心部や観光地とともに、地方への広がりも大きい。日本のソウルフードとなったラーメンを食べるため、外国人自ら店頭に並ぶ光景は珍しくなくなった。
スープや麺、具材に動物性食材を一切使わないラーメン店も出店しており、外国人にとって千円を超える高価格ラーメンも抵抗なく受け入れられており、メーカー各社はインバウンド対応の強化を急いでいる。