酪農乳業専門紙誌が加盟する酪農乳業ペンクラブは4月12日、昨年1月に稼働開始した「雪印メグミルク イノベーションセンター」(埼玉県川越市)を視察した。「共創」をテーマに、研究員同士の技術やアイデアが行き交うイノベーション拠点として機能する同センターでは今後、独自の機能素材やおいしさの研究とともに、骨の健康と糖化(AGEs)成分の関係など新たな乳の可能性に向けた研究にも力を入れる。
同センターは、雪印メグミルク最大の研究開発拠点「ミルクサイエンス研究所」敷地内に創設された。「カテゴリーごとの縦割り開発ではなく、各分野の強みを生かして研究員同士がアイデアを共有し、化学反応を起こしやすい設計にした」(雪印メグミルク)というように、それまで敷地内に点在していた市乳・乳食品・ニュートリションの商品開発施設を1棟に集約した。
センター内部は「研究エリア」「共創エリア」で構成される。「研究エリア」は柱の少ない大空間設計で、各分野で使われる技術や設備を把握しやすく、専門の垣根を越えたアイデア共有が可能。「共創エリア」は1~3階まで吹抜けの空間に、研究エリアを見渡すワークスペースや、食を起点に交流を図るダイニングなどを設け、自由な意見交換や情報共有を促す。
研究開発部研究開発グループの岡崎正典課長は「研究開発のスピードは、センターの環境も大きく貢献していると思う。植物性ブランド『Plant Label』は開発が決まってから1年半足らずで上市できた」と述べる。
今後は、「MBP」「ガセリ菌SP株」「乳酸菌ヘルベ」など独自素材の研究や開発ほか、弘前大学のビッグデータを活用した研究にも注力する。
なかでも「骨の健康と糖化(AGEs)成分の関係」「糖化成分と骨の強度」といった研究を主眼に置く。
「簡易的に糖化度を調べる機械を導入し、糖化と健康の相関など探っていく。骨の内側の骨質には多くのコラーゲンがあるが、ここに糖化成分が蓄積すると骨が脆くなる報告がある。糖化は糖尿病など色々なところに影響している可能性があり、深掘りしていく」と力を込める。
「ミルクサイエンス研究所」の前身となる同社研究所は1973年に川越市に移転。01年の雪印乳業の分社化に伴い、各事業の開発場所が別々の建屋に分かれたことで、開発員同士の交流低下や技術の分断が長年課題となっていた。築50年が経過しており老朽化も深刻なものとなったことから、新たな研究の場として同センターの建設に至った。