チルド帯やブランド横断も 安心感と新しさの両立がカギに
23年度のアイス市場は、記録的な猛暑と下期以降も続いた異例の残暑、人流回復によるCVSやDgSの業績好調などを背景に、過去最高の6千億円到達(前年比9%程度増)を見込む。アイスは近年「夏に食べたくなる冷菓」から「年間通して楽しむスイーツ」へと成長を遂げている。季節ごとの品質変更ほか、チルド帯やブランド横断商品も新たな価値を提供している。さらなる市場成長に向けて、カテゴリーや季節にとらわれない、幅広い提案が重視される。
アイス市場は数量ベースで前年を上回るなど安定した需要に支えられた。
市場を牽引したのは各社の定番ブランドで、ロッテ「クーリッシュ」、赤城乳業「ガリガリ君」、井村屋「あずきバー」、江崎グリコ「パピコ」、明治「エッセル」、森永乳業「ピノ」、森永製菓「チョコモナカジャンボ」、ハーゲンダッツ ジャパン「ミニカップ」、フタバ食品「サクレ」、丸永製菓「白くま」などが挙げられる。
定番品好調の背景には、物価高騰で「失敗しない安心感」を求める消費者心理が大きく影響したとみられており、メーカー各社はさらなる品質向上や、ロングセラーをコスメやゲーム、限定品など新たな切り口で楽しむ施策を展開した。今後人口が減っていくなかでは、需要が底堅い定番品に施策が集中するとみる向きもあり、留め型・PBを含めて目新しい商品やチャレンジングなフレーバーを見かけることは以前より少なくなっている。
今後は、安心感の上に新しさを提案することが重視される。
安心感と新しさを兼ね備えた商品として、ロッテが下期に発売した「ISHIYA監修 雪見だいふく×白い恋人」「生雪見だいふく」は大きな話題となった。「温度帯が違う商品は今後もそれぞれのニーズに合った商品を展開する」(ロッテ)とし、チルドスイーツでは今後「生チョコパイ」「生雪見だいふく」の2ブランドを育成・定着させたのちに、新たな商品開発も視野に入れている。
また、ブランド横断で新たな価値を提供したのが「明治ブルガリア フローズンヨーグルトデザート」「明治チョコレート効果CACAOアイス」だ。健康ニーズに応えるハイカカオチョコや、50周年を迎えたヨーグルトの価値をアイスにも付加し、好評となっている。
さらに、「冷凍和菓子」などのスイーツも強みとする井村屋は、多層構造の「KASANELシリーズ」を柱ブランドとして育成する。23年度に発売した「ショコラケーキアイス」は、食感や味わいの変化などが好評となっており、老健施設や学校給食でも採用された。発売から12年を迎えた「やわもちアイス」でも、「アイスというよりスイーツに近い、トッピングが華かな商品」(担当者)を開発中だ。アイスをスイーツやデザートとして広く捉える動きは今後も加速するとみられる。