ワイン高付加価値化へ 世界市場目指しチリNo.1ワイナリーとタッグ メルシャン

世界のワイン市場を目指し、日本とチリのワイナリーが手を組んだ。

メルシャンでは、チリNo.1ワイナリーであるヴィーニャ・コンチャ・イ・トロとの協働による「パシフィック・リンク・プロジェクト」を始動。双方の造り手が両国を行き来し、グローバル展開拡大を目指す日本ワイン「シャトー・メルシャン」と、「コンチャ・イ・トロ」の日本向けチリワインを相互に造るという全く新しい試みだ。

メルシャンの長林道生社長は「コンチャ・イ・トロ社との取引は50年近くにわたる。『持続可能なワイン造り』という共通する信念のもとコラボレーションしてきた。世界中のお客様にワインの価値をお届けするため、単社ではできないイノベーションを生み出す」と表明(3月19日の戦略説明会で)。

国内で主流である低価格帯での競争から脱却を図り、高付加価値化を推進。ラグジュアリーなワインで、国内外の富裕層にアプローチを強める考えを示した。

季節が正反対となる日本とチリの位置関係を生かすことで、原料のブドウ生産もワイン造りも年2回行うことができる。

「造り手にとっては倍速で造れることになる。またチリは非常に乾燥していて水が少ない一方、日本は逆に湿度の高さが問題になることも。それぞれの国に閉じていた知見が、両国を行き来することで相互のワイン造りに生かせる」(マーケティング部 神藤亜矢部長)。

マーケティングには、ワインの新たな飲用層が拡大するアジアの富裕層を徹底分析して開発した新コンセプト“JEWELS OF THE NEW WORLD”を取り入れた。

宝石を選ぶように、その日の気分や雰囲気に合わせてワインを選ぶことを提案。自らの感性やライフスタイルを基準にワインを選ぶ層に向けて高付加価値化を図り、新たな飲用層を開拓するねらいだ。

プロジェクト第1弾「シャトー・メルシャン 岩出甲州 アミシス2023」 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
プロジェクト第1弾「シャトー・メルシャン 岩出甲州 アミシス2023」

第1弾は「シャトー・メルシャン 岩出甲州 アミシス2023」(750㎖、税込7千円)。日本固有のブドウ品種「甲州」の特徴を生かしながら、海外でも受け入れられやすいバランスの取れた味わいに仕上げた。

来日したコンチャ・イ・トロのイサベル・ギリサスティ副社長は「今回のプロジェクトでは、とくにこれまで扱ったことがない『甲州』を使えることが大変興味深かった」と話す。

メルシャン技術部の勝野泰朗氏によれば、当初は「シャトーメルシャン 玉諸甲州きいろ香」のような日本で人気の酸味の効いた味わいを目指していた。だがチリ側から「これは酸っぱすぎる」と率直なダメ出しを受け、国際的な味覚に近づけることができたという。

プロジェクトを足がかりに、今年の「シャトー・メルシャン」輸出額を前年比1.4倍とする計画。コンチャ・イ・トロ社が持つ世界的ネットワークを通じてブランドのグローバル化を促進する。