カゴメトマトジュース 「原料」「技術」が支え90年 基本は“畑は第一の工場“

カゴメトマトジュースが今年で発売90周年を迎えた。カゴメの創業者の蟹江一太郎氏が1933年に日本で初めてトマトジュースを販売。戦時中は一時中断したが戦後再開し、1960年代の高度経済成長期には「高度成長を支えるビジネスマンにトマト本来の味」、70年代にはオケージョン広告とし“風呂上がりの一杯“をCM放映し、日本中の銭湯にトマトジュースが並んだ。80年代には他社も発売し、「一年中いつでもトマトのおいしさを」として加工技術の取組みをPR。食の西洋化が進む中で、90年代は「野菜不足の食生活に緑黄色野菜」や「トマトジュースだけでつくったおいしさ」。2000年代には機能性やトクホが話題になる中で、「凛々子」の品種名をつけて「リコピンの健康価値」。2010年以降は「畑から育てるものづくりのこだわり」や機能性表示食品のトマトジュース発売により、旬のおいしさと機能価値を訴求している。

商品開発部飲料・食品開発部の瓜生田貴聰主任は、「“畑は第一の工場“というものづくりの思想のもとで、全国500名の契約農家とカゴメのフィールドマンとの繋がりを重視」。フィールドマンは種まき、苗作り、栽培管理などをチェックし、安心・安全なトマトだけを出荷する体制を整えてきた。契約農家との関係は、「面積契約と全量買取」の考えに則り、「豊作、不作に関わらず単価は事前に契約し、獲れた分だけ農家の収入が増えるため、安心して栽培に励んでもらえる」システムを構築した。営農支援の取組みとして、2001年に果実にヘタが残らないジョイントレス品種を開発した。

8月から発売した数量限定の「トマトジュースプレミアム」製法のこだわりは、「トマトをやさしく搾る搾汁方法により、さらっとした喉ごしを実現し、熱をできるだけかけずにパックすることでトマトの爽やかな香りを残していること」(佐藤公宣生産調達本部野菜原料部部長)と指摘。通年のトマトジュースは、独自技術を用いたRO(逆浸透圧)ピューレ原料と、世界各国のトマトペースト原料の組み合わせで実現した。

西村晋介マーケティング本部飲料企画部長によれば、上半期の飲料市場は人流回復で前年同期比106%、野菜飲料市場は金額ベースで96%だったが、カゴメは100%を維持、春の「Go Vivid」キャンペーンにより「野菜生活100」が元気で前向きにイメージにつながった。「野菜生活100」「野菜一日これ一本」は前年割だったが、おいしさ+具体的な機能期待が支持され「トマトジュース」「ラブレ」は好調。「野菜生活100」でも「ベリーサラダ」や「濃厚スムージー」が好調、「カゴメトマトジュース」は2割増だった。

秋冬向け新製品 - 食品新聞 WEB版(食品新聞社)
秋冬向け新製品

「コロナの5類移行や酷暑疲れにより、今秋冬以降は心身の健康や美容意識が高まる」(西村氏)と予測。9月12日から発売する機能性表示食品「野菜一日これ一本トリプルケア」は、中性脂肪、血糖値、血圧に関する3つの機能性表示商品。機能性表示をトリプルで表示は初めてで、「添加物ではなく、野菜本来の成分だけで機能性を実現した」。10月10日発売の季節限定商品「野菜一日これ一本 冬野菜Mix」は、トマト味が苦手な人に向けてにんじんの味わいを活かした。8月から発売している「野菜一日これ一本 ポタージュ」は同社初のポタージュ製品。「ポタージュはスープ各社から発売されているが、野菜がきちっと摂れるポタージュを“これイチ”ブランドで発売することに意義があり、大きなチャレンジだ」。