ファミリーマートは細見研介社長をはじめとする経営層が率先垂範して障がい者と高齢者の理解促進に本腰を入れる。
2024年から施行される障害者差別解消法の改正や団塊の世代が75歳以上の後期高齢者となる「2025年問題」が背景。
来年に迫る障害者差別解消法の改正では、本人が希望する限り、現状では店頭で努力義務とされる筆談などのサポートが義務化される。
同社はかねてから、障がいのある社員との交流や障がいの体験会を行う社内イベント「障がいの理解と社員交流会」を2020年から定期的に開催するなど障がい者の理解促進に取り組んでいる。
今回、経営層が参画することで理解促進の流れに弾みをつける。
9月上旬、取締役や執行役員などで構成されるダイバーシティ推進委員会の計15人のメンバーと一部役員を含む23人がユニバーサルマナー検定3級を受講する。
8月30日、受講を控えた細見社長は囲み取材に応じ「障がいのある方も健常者も同じように人生を楽しんでいくには相互理解が重要。全てにわたり知っておかなければならないが、まずはどういう考えが基礎になっているのかを理解する。その上で枝葉のところを勉強していきたい」と語る。
経営層の受講に先立ち、教育担当社員とコールセンター業務の担当社員の計約50人が受講済みだが、基本的には経営層から社員、社員から加盟店へ伝達していく。
「9月に我々経営層がしっかりと勉強し、その上で、社員の理解を深めるにはどのような形で進めていくのがよいかを随時考えていきたい。大変な作業になるが、全国約120ヵ所の営業拠点まで広げていきたい」と意欲をのぞかせる。
細見社長はこの日、第6回の「障がいの理解と社員交流会」に参加。
目を閉じて白杖(はくじょう)と介助者を頼りに点字ブロックの上を歩き終え「危ないものが何もないと分かっているから普通に歩けるが、実際に見えない状態で歩くのは本当に怖いと思う」と感想を述べる。
点字の作成も体験した。
ファミリーマートは多様性の理解と促進をサステナビリティの柱の1つに定める。
多様性の理解と促進は、LGBTQと障がい者を対象とし、障がい者を対象とした取り組みは社員の雇用・配置と障がいのある来店客への対応に大別される。
同社には現在、約160人の障がいのある社員が勤務。そのうち約50人は千葉県流山市にある約4haの敷地で年間約50種類の有機野菜を栽培している。
収穫された有機野菜は、ファミリーマート社内で販売されるほか、農場近隣にある流山市や松戸市のファミリーマート15店舗でも販売。
「障がいの理解と社員交流会」では、この日の朝収穫された有機野菜の即売会が実施された。
障がいのある来店客や高齢者に対しては以下の4つの項目で対応していく。
(1)環境(什器や通路の幅)
(2)情報へのアクセス
(3)コミュニケーション
(4)教育
このうち教育は、前述したユニバーサルマナー検定の受講などが該当する。
環境の具体策は経営層の検討受講を経て今後詰められる。
情報へのアクセスの一例には多目的トイレが挙げられる。岩崎浩執行役員マーケティング本部サステナビリティ推進部長は「アプリで情報を提供し、どの店に行けば車椅子の方でも利用できるトイレがあるか知ることができる」と説明する。
今年4月には指さしシートを全店舗に一斉導入した。
コミュニケーションの取り組みでは、7月にサステナビリティの専用サイトをリニューアルオープン。「視覚障がい・色覚障がいの方でも確認できるように配色に注意し、音声ガイドのサポートを実施している」。