「買わずに廃業するか、買って倒産するか」。今、海苔業界で半ば自虐的な冗談が広まっている。国産海苔の6割を生産する佐賀、福岡、熊本の有明3県は、赤潮と極端な栄養塩不足から秋芽網の収量が半減。年明けから始まった冷凍網は7割減と、状況は悪化する一方だ。
▼凶作の年は収量ばかりでなく、品質にも影響が及ぶ。例年なら黒々とした柔らかい海苔が採れる冷凍の一番摘みも、今年は緑色で硬く味も悪い。普通なら家畜の飼料などに回る海苔が、玉の確保に追われ信じられない値がついている。
▼その一方で、瀬戸内や兵庫などの生産地は順調に推移しているため、日を追うごとに値は上がり1枚12~13円クラスの海苔に30円の値が付いた。スーパーの売れ筋3つ切り30枚入り358円は、仕入れ値通りに上げれば700円になる。
▼毎年仕入れ資金5億円で1万本を確保している海苔屋は、今年も5億円なら4千本しか手当てできず、売るものがなければ廃業せざるを得ない。高値で買えたとしても売価に転嫁できなければ倒産するしかない。こうした現状から、冒頭の自虐ネタが生まれている。