3年ぶりとなる油脂業界新年交礼会が5日、東京・ロイヤルパークホテルで開かれた。日本植物油協会、日本こめ油工業協同組合、日本マーガリン工業会、油糧輸出入協議会、全国油脂販売業者連合会、全国マヨネーズ・ドレッシング類協会の共催。
主催6団体を代表し、日本植物油協会の新妻一彦会長(昭和産業社長)は「足掛け3年におよぶコロナ禍に加え、原料価格の歴史的な高騰、円安、物流費の高騰など様々な問題に直面する中、油脂業界をはじめ食品産業は国民の生命を守るため、安定した食糧供給とサプライチェーンの機能維持の役割を果たしてきた」としたうえで、「植物油脂の原料価格は昨年、歴史的な価格水準を記録し、足元ではやや落ち着いてきたが、依然として高値が続いている。ロシアによるウクライナ侵攻の影響もあるが、供給面では温暖化に伴う異常気象、需要面では植物油の健康効果が世界的に認められた。食糧需要が増加する中でカーボンニュートラルの世界的な潮流により、バイオ燃料をはじめとする工業用の需要が増加し、植物油脂の需給はタイトになっており、一過性ではない構造的な変化に直面している」と指摘した。
そのうえで、「私ども油脂産業は国民の生命と健康を守る価値ある油脂を安全・安心、安定的に届ける責務を担っている。世界的な人口増加や環境対応、国内では少子高齢化による市場の縮小、人手不足など課題は山積しているが、業界の枠組みを超えて、これまでの慣習や常識に捉われることなく、新たな活動で取り組みを進めていくことが求められている。今年の干支は癸卯(みずのとう)。新型コロナで停滞した冬の3年間を乗り越え、希望に満ちた春が到来し、油脂業界が飛躍する年となることを願っている」と力強く語った。
油糧輸出入協議会の永田義典理事長(三菱商事)は「食糧を取り巻く環境は引き続き、変化の激しい年となる。世界の平和を前提に経済原則のみに則ってサプライチェーンをグローバル化してきた時代は終わりを告げようとしており、有事への備えと地球環境に配慮したサプライチェーンを構築していくことが産業界全体のチャレンジとなる。脱炭素化、生物多様性の取り組みは、油脂業界にも影響を及ぼし、産業の在り方、ビジネスの在り方を変えていく可能性もある。こうした時代の転換期において、私ども油糧輸出入協議会は変化を先読みし、半歩先の対応を心がけることで日本の食を守り、業界のさらなる発展に貢献していく」と語った。
高橋孝雄・農林水産省大臣官房統括審議官(新事業・食品産業)は「様々なコストが上昇し、食糧の安全保障が重要になってきている。有事はもとより、平時から食糧の安全保障を確保していくことが大事であり、フードチェーンを担う食品産業の役割は大きい」としたうえで、食品ロス削減や持続可能な物流構築に向けた取り組みも重要との認識を示した。
乾杯は日本マーガリン工業会の城詰秀尊会長(ADEKA)が行った。中締めは全国油脂販売業者連合会による恒例の油締めで新たな年の飛躍を誓った。