緊急事態宣言解除 経済活動再開も段階的に 愛知は独自の緊急事態宣言継続

政府による39県の緊急事態宣言解除を受け、中京地区でも休業していた商業施設の営業再開や小売、飲食店等の営業時間の平常化などが進んでいる。愛知県は県独自の緊急事態宣言を5月末まで継続する考えのため、県内にオフィスや事業所を構える企業は月末までの在宅勤務を基本としている模様。6月からの営業活動再開を期待しつつ準備を整えているといった状況だ。

小売では、これまで食品売場のみの営業だった百貨店が、17日に名古屋三越、18日には名鉄百貨店、19日からはジェイアール名古屋タカシマヤと松坂屋名古屋店と、順次全館営業(一部テナント除く)を再開した。

地場食品スーパー各社は地盤とするエリアによって状況が異なるものの、5月いっぱいは閉店時間の前倒しやチラシ配布の一時停止・回数減等を継続する考え。

GMSだけの営業にとどまっていたモールも専門店の営業が再開。イオンリテール東海カンパニーでは5月13日に三重と静岡、同18日からは愛知と岐阜のイオンモール内のテナントが営業を再開した。

一方、小売店頭においては、新型コロナウイルス感染拡大防止のための外出自粛要請で内食需要が高まり、巣ごもり消費がすっかり定着。カップ麺や冷凍食品、カレー・パスタソースなどのレトルト、米・パックごはん、パスタ(乾麺)、缶詰、簡便調味料などが好調に推移。このあたりの商品は一部供給調整を行っているものもあるが、一時期の品薄状態はある程度解消されてきた。

カゴメでは、コロナの感染拡大と自粛強化の流れに応じて、パスタソースなどの簡便商品→ピザソースやトマトソース類→トマトケチャップと順に引きが強まったとのこと。野菜飲料も健康面から堅調な動き。味の素でも2~3月はお粥やカップスープの動きが活発で、その後、「クックドゥ」などのメニュー系簡便調味料、さらに時間軸が進むと基礎調味料が伸びているという。

家庭用商品が好調な半面、業務用は飲食店の営業自粛や学校・工場等の休校、操業休止などによる給食の中止等で苦戦が続いているが、こうした業務用の商材を量販店で取り扱う動きも出てきている。例えば名古屋市内にある「アピタ」店舗では、炒飯や鶏唐揚げなど業務用冷凍食品のコーナーを新設。大容量商品を求める顧客のニーズ掘り起こしを図っている。

小売店頭でいま一番の品薄となっているのが、粉物やその関連商品。特に強力粉や「ドライイースト」「ベーキングパウダー」などは在宅時間が増えたことや経済的理由などからパンやピザを手作りする家庭が増えたことで売上げが急伸した。

また、家族が揃うシーンが増えたことでホットケーキミックスやお好み焼粉・たこ焼粉も売上げを伸ばし、パン・ピザの需要増と合わせ、溶けるタイプのチーズやバター、ピザソース、トマト缶なども動きが良い。

消費者の購買行動を見ると、ネットショッピングやキャッシュレスのスコア上昇も顕著となっており、こうした流れはコロナ後も強まっていくと予想される。前出のイオンリテール東海カンパニーでは今年の「母の日」商戦の売上げが昨年の店舗6対ネット4から同4対6に逆転したという。

一方、外食はチェーン店・個人店とも通常営業に戻りつつあるが、店内での飲食を忌避する客への対応として、テイクアウトを継続し、売上げの補完を図るケースが多くみられる。

コロナ禍の影響で今シーズンの開業が遅れているビアガーデン各社。座席数を半分以下に抑えてのゆとりある空間確保、ビュッフェスタイルからオーダースタイルへの食べ放題システムの切り替え、一グループあたりの人数制限などで開業への道筋をつけたいところだが、席数減による売上減少が必至の状況で、オペレーションの大幅変更やそれに伴う人件費増をどう賄うか、価格設定など課題も大きい。

今回のコロナ禍への対応を通じて、「これまでの『ムリ・ムダ・ムラ』を改めて見直す機会を得たと捉えている」との業界関係者の声も聞こえた。中京食品流通業界においても、コロナ禍収束後の「新しい様式」をどう定めていくのかが、経済再活性化に向けた重要テーマの一つとなりそうだ。

中国地方 大型店や百貨店が再開 休校は継続、観光施設はまばら

緊急事態宣言の解除を受け、中国地方でも小売業や飲食業の営業が再開された。広島県は飲食店に求めていた営業時間の短縮を解除し、酒類の提供制限も緩和した。

イズミは広島・福岡両県で休業していた、大型店「ゆめタウン」内専門店の営業を16日から開始。これにより、「ゆめタウン」全店が営業を再開することとなった。百貨店の福屋も18日から全店で営業を再開した。

ただ、広島県は引き続き週末の外出自粛や企業に対するテレワークの活用を呼び掛けている。また広島・岡山の両県では予定通り今月いっぱい県立学校を休校とする。

内食需要の拡大で4月以降、売上げを伸ばしている地元スーパーの幹部は、緊急事態宣言が解除され最初の週末となった16日の客足について「天気が悪かったこともあり、ここ最近の中では比較的落ち着いていた」と話す。ただ、在宅勤務や休校が続けば「昼食にかかわる需要は引き続き強いだろう」とみる。

また、別のスーパーではコロナ関連の生活雑貨などの動きが先週頃から鈍くなり、週明けからマスクの値下げに踏み切ったという。

一方、岡山県や島根県は県をまたぐ移動の自粛を求めており、県外客が多い水族館などの施設は休館を継続する。瀬戸内海の各観光地も行楽客はまばらで、閑散としたままだ。

一部、土産向けの商品も製造する地場メーカーの社長は「関連する分野の売上げは半減した。解除になっても夏休みまでに観光客が戻るかどうか」と不安の色を隠さない。