日本漬物産業同友会(遠藤栄一会長)はこのほど、都内で原料対策委員会を開催した。主要メーカーや産地代表が出席し、干し大根をはじめ原料確保の難しさや気候変動の影響など、業界を取り巻く課題について報告と意見交換を実施。現状と今後の対応策をめぐり活発な議論が交わされた。
各社から共通して挙がったのは、大根や胡瓜をはじめとする国産原料の収量減と品質低下である。特に沢庵原料の九州産干し大根は例年の半分ほどにとどまり、メーカーは休売や規格変更を余儀なくされている。新潟や北関東でも高温障害による大根の空洞化などが報告され、従来の品種や産地リレーの仕組み自体に見直しの必要性が出てきている。
農家の高齢化・後継者不足も深刻だ。各社は適正価格での原料買い取り、自社農場の立ち上げや農機具の貸与など、生産者を支える試みを行っている。企業単位で農家支援の取り組みが進む一方、持続的な原料確保に向けては業界全体での支援体制構築が求められている。
輸入原料も安定的とは言い難く、生姜・らっきょうは依然として賃金上昇や円安によるコスト増を価格転嫁できていない。大根・胡瓜は国産同様に生産農家の減少が進んでいる。結果として、国内外ともに供給リスクが高まっているのが現状だ。
販売面では、キムチが主力ブランドの価格改定でやや鈍化傾向だが、各カテゴリーとも底堅い需要を維持。有力ベンダーによると、浅漬や紅生姜は堅調で、特に紅生姜は米離れによる麺類の調理機会増の流れを追い風に伸長した。梅干も猛暑で需要が拡大。梅ゼリーなど熱中症対策商品も好調に推移した。業務用はインバウンド需要でホテルや外食向けの好調が続くが、「特需は一巡した」との声も挙がる。
消費者の購買力が落ちるなか、付加価値の高い商品や新しい食べ方提案が生き残りのカギとされている。会合全体を通じ、各社は「原料は鉄砲の弾」との認識を共有し、産地との協力強化と気候変動への適応を最重要課題に据える姿勢を示した。