トヨタ自動車はウーブン・バイ・トヨタとともに、東富士工場(静岡県裾野市)の跡地約30万㎡に大実証実験都市「ウーブン・シティ」のフェーズ1(4万7000㎡)を整備し、9月25日、ここで実証実験を開始した。
フェーズ1には住居があり、トヨタ関係者とその家族数世帯がここで生活。一般の人のビジターとしての受け入れは2026年度以降を予定し、最終的な居住人数は300人程度を見込む。
実証実験には、インベンターズ(発明家)と称する企業らが参画。インベンターズは、ウィーバーズ(住民と訪問者の総称)に向けて新製品や新サービスを提供し、ウィーバーズはその使い勝手や感想をインベンターズに伝える。インベンターズはそれらのフィードバッグを発明に活かしていく。
このようにウィーバーズ協力のもと、インベンターズの強みとトヨタの強みを掛け合わせてよりよい未来を紡ぐことを「カケザン(掛け算)」と表現。実証実験ではこのカケザンを促進していく。
オフィシャルローンチイベントで挨拶したトヨタの豊田章男会長は「ウーブン・シティで起こしていくのはカケザン。カケザンは1社だけだと成り立たない、最低でも2社必要。2以上だったらいくらでも掛けることができる」と語り、最初の一歩を一緒に踏み出した企業として、ダイキン、ダイドードリンコ、日清食品、UCCジャパン、Z会、インターステラ、共立製薬の7社を紹介する。
このうち食品・飲料関連では「飲み物が出てくるだけじゃない自販機」(ダイドーに対して)、「未来の食べ物」(日清食品に対して)、「未来型カフェ」(UCCに対して)でのカケザンに期待を寄せる。

ウーブン・バイ・トヨタの豊田大輔シニア・バイス・プレジデントは「インベンターの皆様に実証実験をしていただく際に、最も大事にしたのが想いの部分。“未来の役に立ちたい”“自分以外の誰かのために”という想いに共感できるかといったことを幾度となく議論させていただいた。(参画企業には)何もない中から想いだけで一緒に進めさせていただき大変感謝している」と語る。
成果物のスケジュールなどは未定。
「成果がいつ出るのかは正直わからない。予想もしない成果やアウトプットが出てくるかもしれないし、そうではないかもしれない。たくさんの取り組みができたかどうかが最初に置かれる1つの成果になると思っている」と説明する。
カケザンを進めるにあたっては、“未来の役に立ちたい”といった遠大なテーマではなく、各インベンターの身近なテーマに則る。
「最終的には地球市民としての貢献に取り組むことになるかと思うが、一歩目としてはそれぞれのお客様により笑顔になっていただけることに取り組んでいく」という。

インベンター同士のカケザンも見込む。
「インベンター同士のカケザンもウーブン・シティの狙いの1つ。狙ったカケザンだと左脳で生まれる合理的なカケザンになるが、同じ場所で取り組みをすることで右脳も使った“想い”のところも含まれたカケザンになると、より笑顔が増える。自然発生的に起きるカケザンが起こってほしい」との考えを明らかにする。
ウーブン・シティの名称のWoven(ウーブン)は織り込まれたという意味。トヨタグループの創始者・豊田佐吉氏が発明したトヨタグループの原点である豊田式木製人力織機に込められた想いから命名された。
ウーブン・バイ・トヨタの隈部肇代表取締役CEOは「豊田佐吉は機織りする母を少しでも楽をさせたいという想いから1890年代に木製人力織機を発明した。当時の女性は朝早く起き、家族の食事の準備、家事、畑仕事などをこなし、夜には家計を助けるために機織りをしていたという。“自分以外の誰かのために”という想いがトヨタグループの原点」と力を込める。