伊藤園は、これまで数々のブランドや商品がトライしつつも定着してこなかった炭酸コーヒー市場の創造に向け、好調の「TULLY’S COFFEE(タリーズコーヒー)」ブランドから挑戦する。
5月26日、「TULLY’S COFFEE FIZZPRESSO LIME TONIC(フィズプレッソ ライムトニック)」と「同 FIZZPRESSO BITTER BLACK(フィズプレッソ ビターブラック)」のコーヒー入り炭酸飲料2品を新発売した。
コーヒー飲料市場が2024年、数量減・金額微増と同社が推定する中、「タリーズコーヒー」の販売数量は前年と比較して2ケタ増加するなど、看板商品のボトル缶「BARISTA’S(バリスタズ)」シリーズを軸足に、多様なニーズに寄り添った商品開発で領域を広げている。
近年では、主軸の「BARISTA’S BLACK」のほか、ブラックコーヒーの新たな選択肢として展開した「BARISTA’S BLACK キリマンジャロ」が好調だ。そして今回、その一環としてブラックコーヒーの接点を広げる、ほろ苦いエスプレッソに炭酸の爽快感を味わう「大人の炭酸コーヒー」に挑む。

商品開発にあたり意識したのが、間口(飲用層)だった。
前身の炭酸コーヒー商品について、5月23日、取材に応じたマーケティング本部 コーヒー・エビアン・炭酸ブランドグループ SIV(スぺシャリスト)の宮内智明氏は、「癖になる味わいでリピートを獲得して深く刺さった一方で、間口に課題を残した。また、無糖の炭酸コーヒーとして発売したが、少し酸味があった点が合わなかった。今回は、以前とは異なるアプローチで炭酸コーヒーを展開し、コーヒーの魅力を伝えていきたい」と語る。
この経験を踏まえ、今回は有糖の「LIME TONIC」への期待も大きい。
「『LIME TONIC』の間口のほうが広いと考え、まずは『LIME TONIC』で炭酸コーヒーの魅力を広めていきたい」という。
同商品は、爽やかなライムの香りとエスプレッソのほろ苦い余韻が特徴のエスプレッソトニックをイメージした有糖のコーヒー入り炭酸飲料。
「外食で提供されるエスプレッソトニックには、いろいろな飲み方がある。ハーブを強めにしたり、オレンジ、ピーチ、柚子などを使ったものなどを参考にして開発した」と述べる。
一方、無糖のコーヒー入り炭酸飲料「BITTER BLACK」については「炭酸のガス圧などを細かく調整し、酸味を抑えて上質なレギュラーコーヒーが持つコーヒー豆の味わいを感じられるようにした」と説明する。
炭酸のガス圧は、2品共通して最も苦労した点だったという。
「コーヒーは炭酸と組み合わせると吹きこぼれやすく、かといって吹きこぼれないようにすると炭酸が弱くなり、相性はあまり良くない。この調整が難しかった。さらに酸味を感じさせないところに細心の注意を払った」と振り返る。
2品でコーヒー飲料と炭酸水の両面で未充足なニーズに対応する。
コーヒー飲料では、ブラックやラテ以外の新たな楽しみ方として提案。炭酸水市場に向けては“無糖炭酸疲れ”に対応するものとして訴求していく。
「炭酸水をストイックに飲まれている方も多い。そのようなユーザーに少し甘みを感じられる新たな選択肢として受け入れられる可能性がある」と期待を寄せる。

容器・容量については「今までのコーヒーとは違う入口を創るのが主なミッションのため、ペットボトル(PET)も検討したが、PETよりも炭酸が抜けにくく味がしっかり出せることでボトル缶を採用した。容量については、ガス圧がさほど高くない中で、炭酸を感じたまま飲み切れるように260mlサイズとした」と語る。
シリーズ名の「TULLY’S COFFEE FIZZPRESSO」には、「タリーズコーヒー」が大事にしているエスプレッソコーヒーと炭酸を組み合わせた。「エスプレッソ(ESPRESSO)に炭酸(FIZZ)の要素を加えて少し柔らかさを打ち出した」という。
パッケージデザインはシリーズ名と連動させて、炭酸の泡をイメージしたデザインを採用した。
発売後は、SNSを活用したコミュニケーションや、スーパーや自販機での試飲活動でトライアル促進を図っていく。
「コーヒー飲料の新サブカテゴリを創造し、挑戦を続けるスペシャルティコーヒーブランドとしてリーダーシップを発揮していきたい」と意欲をのぞかせる。
