パン粉業界は、粉価に連動した価格設定からの脱却を迫られている。これまでメーカー各社は年2回の麦価改定に合わせて、主原料である小麦粉の値段が上がれば販売価格を上げ、下がれば値下げするというスライド方式をとってきた。
業界団体の全国パン粉工業協同組合連合会は、副原料や物流費など主原料以外のコストが急激に上昇したことを受け、一昨年からこの方式を見直すよう呼びかけてきた。しかし、パン粉業界は地方に点在する中小メーカーが多く、その後も長年続く得意先との商習慣から抜け出せないまま、思い切った値上げに踏み切れないケースもあった。
こうした中、この10月期の麦価は5銘柄平均で1.8%引き下げられた。一方で副原料や資材の価格は再び上昇傾向にあり、物流業者からの値上げ要請も相次ぐ。
自社配送する企業もあるが、ドライバーの高齢化に悩む。「若手は大きなトラックが運転できないので小型車に変えたいが、効率が下がり新車の購入費用もかかる」と地域メーカーの経営者は明かす。
パン粉の製造工程は複雑で、現場では人手不足も相まって省人化を見据えた新しい設備の導入が必要となっている。だが、コロナ禍前に比べ機械が1.5倍から2倍の値段に高騰しており、新設は容易でない。
連合会の小澤幸市理事長(富士パン粉工業社長)は「これ以上のコスト積み残しが厳しいところまで来ている」と指摘。フライスターの関全男社長も「存続するための前向きな資金を確保しなければならない」と強調する。将来への投資が実現できるだけの適正利益の確保へ向け、粉価連動の価格設定から抜け出せるか。メーカーは正念場を迎えている。
(11月6日付本紙に「パン粉特集」)