「スプリングバレー」ブランドを主軸に国内クラフトビール市場を強力に開拓するキリンビールでは、今月から専門組織「クラフトビール事業部」を発足。ビール類の酒税率が統一される26年10月をブレイクスルーポイントと位置づけ、新たなステージを目指す。
ビール市場におけるクラフト商品の金額シェアは、現在3%弱。市場は着実に成長する一方、ビール類ユーザーの約8割がクラフト未経験層。同社ではこのうち約1800万人と推計する「興味層」にアプローチを強め、30年までにクラフトのシェアを5%に引き上げる計画だ。
昨年からは、量販店専門の営業部隊が始動。さらに今月1日には、クラフトビール事業部を立ち上げた。
同事業部の部長に就任した大谷哲司氏は「キリンビールと少し違った文化をまといながら、ビジネスを進めていく必要がある」と、事業部新設の目的を語る(15日、下期クラフトビール取組説明会で)。
営業やマーケティングの垣根を超えてアイデアを出し合うことで、これまでにない組織風土を作り上げる。
「仕事のやり方も変えてスピード感や創造性を高め、とにかくチャレンジを行うチームを目指している」。
ビジョンに「みんなと共に、日本のビールの新たな100年を!」を掲げる。
「われわれだけが成功しても、ビジネスの成長はない。みなさまとの協働で拡大していきたい」(大谷氏)。クラフトブルワリー各社の製品を持ち寄った品質官能評価会の開催を拡大するなど、業界内でヨコの連携を強化。タッグを組むヤッホーブルーイングとは、下期に売場での初コラボ企画も実施予定だ。
東京と京都で2店舗を展開する「スプリングバレーブルワリー(SVB)」は、良質な飲用体験を創出する拠点として市場やブランドの成長に貢献する。
この日説明会が行われた東京店(代官山)は5月にリニューアル。初心者も気軽に楽しめる1階と、コース料理とのペアリングによる本格的なクラフト体験ができる2階とでコンセプトを分けたことが好評という。創業10周年の来年に向けて、多彩な企画を準備している。
「お客様に良質な体験をしていただく場所。また品質向上や人材輩出で業界に貢献し、共創につなげる場でもある」(SVB井本亜香社長)
SVBを軸に、日本産ホップを使ったビールの普及活動にも力を入れる。日本産ホップの生産・醸造に特化したセミナーや、他社へのホップ販売を拡大。飲食店との協働による日本産ホップ使用ビールのイベントも通じ、日本のクラフトビール文化を盛り上げる。