イオンは下期(2月期)、値頃感の打ち出しを強化していくほか、中長期を見据えて事業構造を抜本的に改革する。消費者の価格感度の高まりによる食品の需要低迷を受けた動き。上期、主力の小売事業は客数を確保して増収となったものの、コストアップを吸収し切れず減益となった。
10月9日、上期決算説明会に臨んだ吉田昭夫社長は「前年度グループ全体の業績を牽引した小売事業が今期一転して悪化した。足元では完全にインフレが定着し、総務省の家計調査報告を見ても可処分所得は増えてきたが、(住居等を除く)消費支出は所得の増加に比例していない」と振り返る。
節約志向の高まりの影響を色濃く受けたのが食品。上期は食品の買上点数が減少した。直近の景況感について「旅行を中心とする教養娯楽に消費を回して、日常生活はきっちり切り詰めたいという2つの要素が混ざって食品やコモディティ商品(への支出)はかなり抑えられている。値上げをすれば、バスケット単価に合わせて1品減らして夕食を食べるような感じになっている」との見方を示す。
食品の買上点数が減少する一方、価格の打ち出しを強めた催事に来店が集中する傾向にあるという。
「非常に価格訴求を行うスーパーが増えてきており、円安・インフレ下で原価上昇する中での価格競争という環境になってきた。小売企業にとって売上総利益率(荒利益率)の確保が難しい状況」と指摘する。
こうした環境変化への即効的な施策として、価格戦略・商品戦略を強力に推進して荒利益額・荒利率で利益改善を図る。
「売上増による荒利総額を上げる施策にシフトしていきたい」との考えのもと、上期に7%伸長したプライベートブランド(PB)「トップバリュ」の価格の打ち出しを強化していく。
「10月から食料品の値上げが3000品目にも上ると報道されている。こうした状況はPBの品質と価格優位性を発揮しやすい環境と捉えている」と語る。
10月下旬には「トップバリュ」の価格訴求型「ベストプライス」で新商品・リニューアル品を約400品投入するほか約100品で増量企画を実施する。
「加工商品や日配食品には『ベストプライス』の拡大によって対応し、生鮮食品においては各事業会社において企画とプロモーションを強化して競争力を高めていく。徹底的に『お客様の暮らしを支えていく』というメッセージを出して最大商戦である年末年始を前に客数増加を定着させていきたい」と述べる。
中長期な取り組みとしては、サプライチェーン全体の構造改革に取り組み、川上を含む全体を包括したハイマージン事業への転換を図る。
「やはりある程度のスケールを持って川上に入っていく必要があり現在、グループのスケールを束ねている。商品IDを統合しイオングループの商品がすべて一つの形で見えると、例えば水がグループで何本売れているかが瞬時に分かり、スケール(メリット)を(価格に)転嫁していける。サプライヤーさまにお願いする部分もあるが、自ら川上にどこまで入っていけるかが収益構造そのものを変える評価になる」との考えを明らかにする。