コーヒー飲料市場で、紙パック入りアイスコーヒー(紙パックコーヒー)の市場が拡大している。
紙パックコーヒーは、一般的に大容量のボトルコーヒーよりも平均して100円ほど高価に設定されている。ドライ・チルドの2つの売場があり、両方で伸長している。ボトルコーヒーより高くとも売れている要因は、嗜好性と簡便性の2つのニーズに対応しているためとみられる。
嗜好性の高まりは、コーヒーユーザーの裾野が拡大したことで引き起こされていると考えられる。
止渇ニーズに色濃く対応するボトルコーヒー市場の拡大に伴い、よりおいしいものを求める層も増加。コーヒーは嗜好品のため、常飲の味わいに慣れると、より品の高いものを求める傾向にあり、逆行の動きはあまりみられない。
簡便性の高まりについては、コロナ禍の巣ごもり需要でレギュラーコーヒー市場が一時期大幅に拡大したことが契機になった模様。
家庭で抽出器具などにこだわり、レギュラーコーヒーをハンドドリップする動きや豆から挽いて楽しむ動きが活発化。産地や品種への関心も高まり、おいしさを追求する一方で、時短化やタイパの潮流から「簡単においしいコーヒーを飲みたい」とのニーズが高まり、その受け皿を紙パックコーヒーが担っていると推定される。
加えて、地球温暖化が需要を後押ししていると思われる。夏場の需要増に加えて、冬場の温暖化がある。室内の気密性の高さから、ボトルコーヒーでは冬場の需要も拡大傾向にあり通年化している。
ドライ売場では、キーコーヒーが存在感を発揮。低価格のボトルコーヒーが席捲する700g以上のドライコーヒー飲料市場の中で、「リキッドコーヒー テトラプリズマ」は高単価でありながら販売個数で10位以内に入る。
チルド売場では、小川珈琲の「京都 小川珈琲 炭焼珈琲」(炭焼珈琲)シリーズが好調。23年3-8月の販売金額は、ボリュームゾーンの「無糖」が前年同期比二ケタ増を記録して同シリーズを牽引した。
UCC上島珈琲は「UCC ゴールドスペシャル」「UCC GOLD SPECIAL PREMIUM」「上島珈琲店」の3ブランドで紙パックコーヒーを展開。どのブランドも好調で、特に「UCC ゴールドスペシャル」は配荷が拡大し回転も良く伸長しているという。
伊藤園が21年から販売している「TULLY’S COFFEE(タリーズコーヒー)」ブランドの紙パックコーヒー「MY HOME」シリーズも好調。23年1-12月の販売数量は前年比4割以上伸長した。
「タリーズコーヒー」のような新興勢力の増加も市場活性化に拍車をかける。
コカ・コーラシステムは昨年、「コスタコーヒー」で紙パックコーヒー市場に参入。3月25日には「ホームカフェ ブラック」「同 加糖」のパッケージをリニューアル発売して磨きをかける。