たくあん 原料とコストが課題 需要維持へ商品力の向上を

沢庵(たくあん)業界の重要課題は原料の安定確保とコストアップ対策だ。今後も安定的に原料を仕入れるため、持続可能な収穫方法や原料農家とメーカーの双方が納得できる換金方法を、メーカー側が農家へ示す必要がある。同業界も近年のコスト高に伴い、製品価格の適正化を進めている。今後も引き続き需要を維持すべく価格適正化と併せて商品力の向上を図りたい。

沢庵・大根漬の23年出荷額はほぼ横ばいの370億円となった(本紙推定)。近年の販売は安定しているが、昨年は東日本で原料大根が不足し、需給がひっ迫した。コロナ禍で苦しんだ業務用は、観光土産向けも含めておおむねコロナ前の水準まで回復した。

昨今は都市部を中心にスライスカップが伸長。利便性で支持され、一部の有力メーカーでは供給が追い付かなくなるほどだ。

一方で、ローカルではコスパのよい一本物がまだまだ根強く、沢庵もコスパと利便性の両方のニーズがある。

同市場の課題は引き続き原料確保とコストアップ対策だ。近年、原料農家は高齢化と後継者不足により急速に減少している。ある有力メーカーが原料農家を対象に今後の見通しについてアンケートを実施。その結果から、「原料農家は10年後には半減」と予想する。このまま行けば将来的に大根の収穫量は大きく減少するだろう。

原料の減少に歯止めをかけるにはメーカー側が持続可能な収穫方法や、メーカーと農家の双方が納得できる換金方法を示さねばならない。そして、その手法が業界全体に広がる必要がある。またメーカーは内部的に、今後の原料価格上昇に耐え得る仕組みを作らなければならない。

さらに、コスト高対策も重要だ。近年の価格適正化により沢庵の店頭売価も上がってきた。流通大手では塩押しの一本物が300円、干しの一本物が400円を超えてきた。「値頃感を外れて、需要が減退しないか」と懸念する声も一部にあるが、製造原価や販管費を抑えるといったメーカー側の努力も限界に来ている。

今春も価格改定を実施する有力メーカーがある。市場には値上げ後も販売好調の商品があり、それらは商品価値、商品力がユーザーに認められている。今後も沢庵が支持されるように、価値向上・商品力向上に取り組みたい。