滋賀に思いをはせる

滋賀県で一仕事をする予定を控えている。滋賀の食といえば、近江牛はもちろんのことだが、平和堂の「サラダパン」や鯖街道、琵琶湖ならでは「サバそうめん」「フナずし」が滋賀の食として頭に浮かぶ程度。近県で生まれ育った割にこの土地に関する知識量が少ないことに気づき、何かしら予習をしようと話題の“滋賀小説”を手にした。

▼「成瀬は天下を取りにいく」は、3年前の8月に閉店した西武大津店をモチーフにした作品。反響が大きく、出版会見が県庁で行われ、知事も出席、大津市内のレストランではコラボメニューも提供したそうだ。

▼主人公・成瀬は、閉店する西武大津店に「中二の夏を捧げた」少女。大津にデパートを建て、200歳まで生きると宣言しているが、奇抜な行動や発言が違和感なく響くのは、作者の筆の力か。さらに、「湖風祭」「競技かるたの聖地」「ミシガンクルーズ」など現地情報の散りばめ方も好感が持てる。

▼読了後、早くも滋賀に行きたくなってきた。成瀬がどのように夏を捧げたかは読んでいただくとして、私も残りの夏を何かに捧げたく考えている。