エースコックの海外事業が拡大を続けている。22年度売上高は762億4千900万円、前年比34.8%増。主力のエースコックベトナムは急速なコスト上昇を背景に3度の価格改定を実施したが、国民食のように親しまれる「Hao Hao(ハオハオ)」ブランドを中心に販売数量も前年を上回った。引き続きベトナム国内の市場拡大を図りながら、今後は国外への輸出にも注力する方針だ。
年間35億食を生産
ベトナム事業は1993年に合弁会社を設立し、95年に現地で製造販売を開始した。現在は同国内に7拠点11工場を構え、年間約35億食(輸出含む)を生産。市場シェアは約4割で、20年以上にわたりトップを快走している。
飛躍の足掛かりは2000年に発売した袋麺「Hao Hao」の大ヒットだ。海外事業部長の平野彰取締役によると「参入当初は高価格帯製品を中心に展開していたが、『Hao Hao』は普及価格帯の1千ドン(当時)で発売。当社製品のおいしさが広く認知されるキッカケになった」。メーンフレーバーの「Tom Chua Cay(トムチュアカイ)」は、現在も売上全体の中に占める割合が大きい。独特の香りとスパイシーな味わいが特長。なお「Hao Hao」は22年に3度の価格改定を実施。3千500ドンから4千500ドンと3割近く引き上げた。他の商品では、麺・スープとも激辛が堪能できる「SiuKay」シリーズ、多彩なラインアップのカップ麺「MODERN」シリーズなどが人気。
直近では、日本の本格的なラーメンが味わえる「絶品」シリーズが話題を呼んでいる。昨年12月にカップ麺で「醤油味」「豚骨味」、今年2月に袋麺で「豚骨味」「焼きそば味」を発売。より付加価値の高い製品を求めるニーズに応えていく。パッケージには「日越外交関係樹立50周年」のロゴを入れた。平野取締役は「ベトナムは経済成長とともに食生活が変化しており、ラーメンや寿司など和食も広く親しまれている。現地の嗜好にあわせた製品開発と並行し、多彩なラインアップを充実させていきたい」と説明する。
輸出拡大に力注ぐ
世界ラーメン協会(WINA)によると、22年1~12月のベトナムのインスタントラーメン総需要は84.8億食で、世界3位の座にある。人口約9千946万人で割った1人当たりの年間消費量は約85食と高水準だが、当面は人口増を背景にマーケットの拡大が見込まれる。
一方、同社は世界各地で即席麺の潜在需要は大きいとみており、ベトナムで製造した商品の国外輸出にも注力していく。すでにアジアの周辺国のみならず、越僑(外国在住のベトナム人)が多い中欧をはじめ、西欧や米国など約30か国へ展開。ラーメンに加え、フォーなどライスヌードルの引き合いも多いという。
今後に向けて、平野取締役は「25年に現地生産開始から30年を迎える。当社はこれまでベトナムの方々に広く親しまれ、大きな事業に育てていただいた。今後もより良い製品を提供し続け、現地の食生活や経済に貢献したい」と語った。