研究では鶏卵の主要アレルゲンであるオボムコイド(OVM)遺伝子を、広島大学が独自開発したプラチナムターレン技術を用いたゲノム編集により除去。受精卵のOVM遺伝子の働きを狙って止めることに成功した。その後、孵化した遺伝子ノックアウトニワトリのひなが成長し、交配・産卵することでアレルギー低減卵を作り出す仕組み。
この鶏卵からはOVMとゲノム編集により産生の可能性がある変異たんぱく質は検出されなかった。また通常のニワトリとOVMノックアウトニワトリのゲノムに大差はなく、OVMノックアウトニワトリでは標的以外のゲノムへの影響がないことを確認した。さらにゲノム編集による別の遺伝子の挿入やほかの遺伝子に対する影響も認められなかった。研究成果は、学術専門誌「フード・アンド・ケミカル・トキシコロジー」の5月号に掲載される(電子版は3月12日付で公開)。
鶏卵のアレルゲン物質は卵白に含まれるたんぱく質(オボアルブミン、オボトランスフェリン、オボムコイド、オボムチン、リゾチームなど)で、OVM以外のたんぱく質は加熱によりアレルゲン性が低下する一方、OVMは熱や消化酵素に強くアレルゲン性を失わないことが知られている。広島大学とキユーピーは13年からOVMを含まないアレルギー低減卵の作出に関する研究に着手。22年からは科学技術振興機構(JST)による産学連携プログラムに採択されている。
現在は応用研究の段階で、今後、相模原病院と共同で取り組む臨床試験で有効性を確認するほか、広島大学では育種造成を、キユーピーでは凝固性、起泡性、乳化性などの物性や加工適性を評価。新たな研究成果は学会発表する。
アレルギー低減卵が実用化されれば、卵アレルギーを持つ人でも食べられる食品や重度の卵アレルギー患者でも接種できるワクチンの技術開発に道筋がつくことになる。