人口が減少する日本で水の消費量は増加の一途を辿る。
サントリーウォーターレポートによると、1日に飲む水の量は、12年からの10年で約1.8倍に増加。
「高齢化社会で水分摂取のマーケットは小さくなるとみる向きもあるが、実際は逆で、増えていく傾向にある。ミネラルウォーターの消費量もここ30年で20倍以上増えている」と指摘するのはサントリー食品インターナショナルの齋藤和弘社長。9日、「サントリー“水と生きる”」発表会に臨んだ。
ミネラルウォーターの消費拡大については「高度成長期に水道水の質の悪化が言われていた時期もあったが、現在はそれとは関係なく、かなり前から1人当たりの飲用量が増えている」と述べる。
1人当たりの飲用量が増えている理由については「あまり説明がつかない」とした上で、ペットボトル(PET)が登場したことで水が便利に持ち運びできるようになり潜在ニーズを掘り起こしたことが一因と推測する。
「PETでハンディーになったことで、もともと現代人は水を欲していたことが顕在化した。(体内の水分量が減る)高齢化はそれを加速していると私は理解している。
同じような人口構成比のドイツ、イタリア、香港、シンガポールも恐らく同じ傾向だと思う。高齢化や現代化が進み、ストレスが高まるほど水の飲用量は増えていくだろうという仮説を持っている」と説明する。
今後も世界的に水の消費量増加が見込まれる一方、森林伐採など環境破壊の影響もあり人間が利用できる淡水は不足している。
この世界的な水不足に備えるべく、サントリーグループは水源涵養活動を強化している。
サントリーでは、全国の工場の水源涵養エリアで地下水を育む力の大きい森を目指し2003年から「天然水の森」と称する水源林保全活動を行っている。
これまで40人を超える多分野の専門家とともに、のべ7800人強の社員が全国22カ所・約1万2000haで活動し、国内工場で汲み上げる地下水量の2倍以上の水を涵養している。
今後については「水の需要は増える一方、水源の保全はだんだん難しくなる。水源涵養活動から得られた知見でお役立ちできるのであれば、世界のどこの場所と言わずに具体的な活動として進めていきたい」と語る。
この考えのもと、熊本地域の地下水の持続可能性確保に向けて、昨年末、くまもと地下水財団との共同研究の協定を締結した。
「我々の水科学研究所と熊本大学・嶋田純名誉教授の研究所で、地下水がどのように浸透し蓄えられ表層に出てくるのかといった水の全体像を把握する共同研究をスタートする。ここで得られた知見についても日本のみならず世界に還元していく」と述べる。
「天然水の森」の活動も拡大していく。
直近の2月6日には、東京都檜原(ひのはら)村・檜原村木材産業協同組合と森林整備に関する協定を締結し「〈天然水のビール工場〉東京・武蔵野」や飲料の製造を行う多摩川工場の水源涵養エリアにあたる森林で水源涵養力と生物多様性の向上を目的とした森林整備活動をさらに拡大する。
世界に向けては、降雨量の多いところでは水源保全の必要性を啓発する「水育」と称する活動をタイやベトナム、インドネシアなどで展開している。
一方、降雨量が少なく、プランテーションが行われているエリアに対しては知見を共有する。「“水ストレス”が高いエリアでは、涵養すべき水源がどこにあって、どのように水源を保全するかといったスタディから始めて環境負荷をかけない収穫に向けて取り組んでいる」と説明する。
水源涵養活動は既にグループ会社がアメリカ、インド、スコットランドで展開され「今後ますます加速させていく必要がある」との見方を示す。