三菱食品はこのほど都内ホテルで取引先メーカーを招き、「三菱食品プレゼンテーション2022」を開催。京谷裕社長は、三菱食品が目指す方向性やデジタル戦略の取り組みについて、次のように語った。
節約志向、イミ消費、サイクル短縮化…新たな環境に「需要を生み出す行動」を
先月の「ダイヤモンドフェア2022」では中長期を見据えた食品流通のあるべき姿や生活者に新たな価値を提供するための具体的なソリューションを提案。コロナ禍にもかかわらず、前回を上回る約7千人の来場をいただき、皆さまから頂戴した要望にスピードを上げて取り組む。
国内市場は人口減少、超高齢化社会が加速し、地政学リスクの高まりや円安進行によるコストプッシュ型のインフレも進行している。コロナ禍で生活者のライフスタイル・価値観は大きく変わり、デジタル技術の進展と相まって過去に経験したことのない変化に直面している。
中間層の貧困を意味するスクリューフレーションと格差拡大が深刻化し、消費の二極化と節約志向が強まっている。一方で環境配慮などの「イミ消費」も広がりを見せている。ネット社会の到来は情報伝達の同時性を早め、消費サイクルの短縮化と多様化が進んでいる。だれも経験したことのない市場環境を勝ち抜くためには、過去の延長線上に活路はなく、自ら新たな需要を生み出す行動が求められる。
コロナ禍で生活者の食に対する注目度は増しており、フードライフパートナーであるリアルの小売業に対するロイヤリティや親近感は高まっている。生活者に寄り添うサービスの拡充、最新のデジタル技術を駆使した顧客体験の提供により、新たな価値を生み続けていくチャレンジが求められている。
私ども三菱食品は既存の卸事業の機能と役割を進化させ、メーカー・小売業のチャレンジをサポートし、新たな領域を拡充していく。メーカー、小売業をつなぐ歯車として、サプライチェーン全体の持続安定性に寄与するとともに、生活者との連動により持続可能な食品流通エコシステムを実現し、フードライフパートナーとしての役割を目指していく。
持続可能な食品流通エコシステムの実現には、皆さまから選ばれ続ける卸売業でなければならない。サステナビリティ実現に向けた取り組みを一層強化し、信頼されるパートナーとして、社会課題解決に貢献する食品流通エコシステムを構築していく。
その土台となるのが、取引先小売業3千社、年間12億件の出荷データからなる流通ビッグデータである。これを基盤にデジタルマーケティングプラットフォームを構築し、マーケティング領域での需要創造、効率化・コスト削減に向けた物流サプライチェーンマネジメントなど、新たな取り組みを提案する。
マーケティング領域では、日々の出荷データに外部データを組み合わせ、新たな付加価値サービスを提供する。位置情報データを活用した広告配信や店頭サイネージと連動した販売促進、トレンド予測や食品流通構造の可視化に向けた取り組みを広げていく。
物流サプライチェーンマネジメント領域では、デジタル技術を最大限活用した効率化の仕組みを提供し、製配販が連携してムリ・ムラ・ムダの是正に取り組む。配送トラックの空きスペースを有効活用する余積シェアリング、全国ネットワークを活用した物流代行サービス、在庫最適化に向けた需要予測など、今後さらに精度の高いサービスを提供していく。AIを活用した棚割業務の効率化や、三菱商事グループのシナジーを生かした原料資材などの供給事業も強化する。