渋沢栄一 コーヒーでも先駆

コンビニなどのレジでぴったり会計しようと思い小銭をちょっと探そうものなら無言の圧を受ける――。最近このように感じることが多くなり「キャッシュレス化やむなし」と思っていた矢先に新紙幣が発表された。

▼偽造防止の観点でほぼ20年ごとに紙幣を刷新してきたとのことだが、キャッシュレス化に逆行した動きのように思える。それはともかく新1万円札の顔に採用された渋沢栄一について触れたい。日本の経済近代化の功労者である渋沢栄一がコーヒーを先駆的に嗜んでいたのをご存知だろうか。

▼「食後カッフへエーという豆を煎じたる湯を出す砂糖牛乳を和して之を飲む頗る胸中を爽やかにす」――。これは渋沢栄一・杉浦譲共著の「航西日記」に収められている朝食の記事で、コーヒーを嗜好品として明確に文字に記録して残った最初の例とされている。「航西日記」は渋沢栄一と杉浦譲が1867年(慶応3年)に徳川昭武の随員としてフランスを訪れた際の体験記で、徳川昭武の日記にも渋沢栄一とコーヒーを飲んだという記述がある。

▼カウンターコーヒーでも“頗る胸中を爽やかに”なりたい。