三和酒類は11月25日、扶桑薬品工業、ちとせ研究所、九州大学と共同で大麦焼酎製造の副産物である蒸留残液の上清を培地添加することで、CHO細胞(Chinese hamster ovary=チャイニーズハムスター卵巣細胞)による抗体生産が向上する研究成果を論文化したことを発表した。
CHO細胞は人で機能する組換えタンパク質などのバイオ医薬品生産に最もよく使われる宿主細胞。生物学的に活性があり、免疫原性のない組換え抗体を、その糖鎖修飾パターンがヒト抗体と類似した形で培養生産できることから、人への応用に適したバイオ医薬品を製造できる特性がある。
三和酒類では5年前から、大麦焼酎蒸留残液上清を培地に添加し異なるCHO細胞株および異なる生産抗体による培養試験を継続してきた。その結果、大麦焼酎蒸留残液上清に含まれる複数の成分の相乗効果により同細胞の中でもCHO-MK細胞では1.4倍、CHO-DG44細胞では1.2倍、多いもので2.4倍に抗体生産量が向上することを発見。製造1回当たりの生産量増加を通じて製造コストの削減を見込めるメリットがあることをつきとめた。
同成果はCHO細胞培養における抗体生産性向上という観点から、バイオ医薬品製造プロセスの効率化につながる可能性を秘めている。特にCHO-MKはバイオ医薬品製造用のオリジナル宿主細胞として、日本で開発された宿主細胞株。従来のCHO宿主細胞株と比較して著しく高い生産性を有していることから、新薬開発の現場でも活用が期待されている。
同研究を手掛けている技術士(生物工学)である三和酒類三和研究所研究室の中村彰宏室長は「本研究により、当社が長年培ってきた酒類製造技術がバイオ医薬品の分野にも貢献できる可能性を見いだすことができた。今後も実用化に向けた研究開発を継続していく」とコメントしている。
三和酒類では今後も大麦焼酎蒸留残液上清の応用によるさらなる抗体生産性向上を目指した検証および詳細な製品仕様の開発を進めていく意向だ。
