「冷凍食品は業界をあげて価値に見合った価格の実現を目指す。コストアップ分を適正な価格転嫁と賃上げに好循環できる社会の方が、より多くの人々が幸せになれる」と訴えるのは日本冷凍食品協会の藤江太郎会長(味の素会長)。
このほど開いた年末記者会見の席上、「物価高で財布の紐が固くなっており、短期的には価格対応が必要な局面かもしれないが、中長期的な視点でありたい姿を積極的に発信していく」との想いを強調した。
国内の冷凍食品業界について「加工食品全体を見渡しても数少ない成長カテゴリーの一つ。会員各社が工場で手間ひまかけて価値ある商品を製造している。ただし、それに見合った提供価格が実現できていない」と指摘。
自身の豊富な海外勤務の経験から諸外国を例に挙げ、「例えば日本とアメリカで価格を比較すると、大手ハンバーガーチェーンの同じメニューは日本(約480円)が米国(約900円)に比べて約6割の水準で、冷凍食品の餃子(グラム単価)は米国比で4割とさらに安い。後者はせめて米国比6割の価値は十分あるはずだ。海外でコストアップの価格転嫁はごく自然なこと。国によっては物価上昇以上の賃上げを法制化しているケースもある。今でも価格改定が連日ニュースになるのは日本くらいではないか」と説明。
「値上げは波の先頭に乗っていくことが大切。適切な価格転嫁と賃上げの好循環を実現するため、一つの業界団体から変えていけることもあるはず。世間でインフレや賃上げに対して数年前とは潮目が変わりつつあり、受け入れられやすい雰囲気も感じている」と語った。
新認定証マークでHACCP対応訴求
協会は今年、会員工場の品質・衛生管理の要となっている認定制度を改定。「HACCP」に対応していることを明文化し、「認定証」マークは「HACCP」の文字を大きく取り入れたデザインに一新した。川﨑順司常務理事は「各工場にアンケートを取ったところ、制度の改定内容について好意的な意見が8割以上あった。マークも分かりやすくなったとの評価が多い」とした上で、「今後の課題は新しくなった認定マークを広く周知すること。安全・安心の商品として生活者に選んでいただける目印にできれば」などと話した。
25年の国内冷凍食品生産量は152~155万t、前年比1%前後の増減を予測。藤江会長は「家庭用はコメ価格高騰もあって主食用の米飯類やワンプレート商品が好調な売れ行き。業務用は人手不足を背景にインバウンド需要が増えている外食をはじめ、給食や中食でもニーズが高まっている」と述べた。
