小川珈琲は、秋冬家庭用コーヒーの目玉施策として、情緒的価値に重きを置く「春」「夏」「秋」「冬」の期間限定コーヒーシリーズに磨きをかける。
パッケージを刷新して、9月から11月にかけて「秋珈琲」を、11月から来年2月にかけて「冬珈琲」を発売する。
取材に応じた増田隆教総合開発部部長代理は「期間限定コーヒーのリニューアルがこの秋冬の柱になる。コーヒーの価格が高騰する中で、価格以上の価値をお客様に感じていただくには、おいしさを前提に情緒に訴えることが大切。情緒的な価値は、人流が活発化しリアルでのコミュニケーションが増えていくのに伴い一層求められると考えている」と語る。
パッケージのリニューアルにあたっては、それぞれの季節の季語を取り入れ、小川珈琲のデザイナーが水彩を用いて一つ一つ丁寧に描いた。
「秋珈琲」は、錦秋(きんしゅう)をテーマに、紅葉が美しく色づく秋の風景を錦の織物のように描き、「冬珈琲」は雪が木の枝から垂れ下がっている様子をイメージして冬の美しさや静けさを描写した。

各季節で粉(140g)とドリップコーヒー(8杯分)を取り揃え、今回、「冬珈琲」においてはEC商品としてドリップコーヒー(16杯分)を新発売した。
期間限定コーヒーの前期(8月期)売上高は、価格改定効果もあり前々期比約10%増を見込む。販売数量はほぼ横ばいになったとみられる。
小川珈琲の豆商品が好調に推移している。
前期の家庭用コーヒー全体の販売実績については「『小川珈琲店シリーズ』と『小川珈琲店 有機珈琲シリーズ』が売上・数量ともに拡大した。売上は粉・豆の全体で10%以上伸長し、豆だけに絞り込むと30%程度伸長した」と振り返る。
好調要因は、「小川珈琲店シリーズ」と「小川珈琲店 有機珈琲シリーズ」のブランド力が底流にあるという。この中で豆商品については、生活者のコーヒーへの探求心やコーヒーリテラシーの高まりが後押したとみられる。
「豆はコロナ禍で急拡大した。現在、YouTubeやInstagramなどからコーヒーに関するさまざまな情報が得られるようになり、グラインダーも手軽に使えるものや高性能なものが増え、豆からコーヒーに入られる動きも出てきていると思う」との見方を示す。
「小川珈琲店 有機珈琲シリーズ」は近年、同社エシカルコーヒーの主力商品として順調に拡大し、家庭用有機レギュラーコーヒー市場で8割強のシェアを握る。
市場が大きい粉商品も前期、売上が拡大した。
3月に発売開始した「小川珈琲店 キリマンジャロブレンド」(140g粉)については「前身商品の『ブリューワーズブレンド』と比べて非常によく売れている」との手応えを得る。
同商品は、タンザニアで小川珈琲としっかり取り組んでいける農園との関係が構築できたことから、同農園のコーヒー豆を使用した新ブレンドとなる。
「キリマンジャロブレンド」のブレンドに使用したARKキリマンジャロは、タンザニアの中でも北部キリマンジャロ山麓にあるモシ地域の高い標高で栽培されたもの。カッピング評価が高く、栽培・収穫から精選まで一貫した管理が行われている。
春夏のアイスコーヒー需要獲得にも手応えを得る。
「炭焼珈琲」シリーズの1L紙容器アイスコーヒー3品(無糖・微糖・加糖)はコーヒー豆の高騰を受けて3月に価格改定を実施、好調を維持して前期(8月期)売上高は上回る結果となった。
支持されている理由については「ECで引き合いが強まっている。特に自社ECでは、ご年配の方のご購入が増加傾向にある。温暖化が進み、自ら抽出する必要のないおいしいアイスコーヒーを飲みたいニーズに、外出を控えたいニーズや重たい1Lのアイスコーヒーを持ち運びしたくないニーズが重なったことが要因」との見方を示す。
参考小売価格700円の高単価リキッドコーヒー「京都 小川珈琲 有機珈琲 無糖」(有機珈琲 無糖)の前期売上高は、前々期の販売規模が小さかったこともあり、前々期比5倍の高い伸びをみせた。
希釈コーヒー「京都 小川珈琲 炭焼珈琲 カフェオレベース 無糖」は前期、売上・販売数量ともに拡大。売上は30%増となった。
小川珈琲は昨年9月1日に、「小川珈琲 スペシャルティコーヒーブレンド シリーズ」を除く家庭用コーヒー全品(約60品)を対象に価格改定を実施。今年3月1日には、計16品のレギュラーコーヒーの粉と豆商品を現行の160gから140gに減量して出荷価格を据え置き、「炭焼珈琲」シリーズ3品(無糖・微糖・加糖)の価格改定を実施した。
価格改定効果により家庭用コーヒー全体の前期売上は前々期を上回った。
8月1日には「小川プレミアムブレンド」など家庭用レギュラーコーヒー約50品を価格改定した。


