春雨市場が活況だ。コロナ禍の健康志向で急速に伸長し、その後も安定成長を続けている。従来の低カロリーなイメージに加えて、メニューの多様化により麺の代替需要として広がった。関連メーカーからは市場の転機に期待する声が高まっている。
春雨を使ったメニューはかつてサラダや酢の物、鍋物が主流だったが、韓流ブームをきっかけにチャプチェが人気メニューとして認知されるようになり、惣菜売場で拡大した。昨年からは麻辣湯(マーラータン)が新たに加わり、外食市場に急速に広がってきている。
麻辣湯は中国・四川省発祥のスープ料理で、しびれる辛さ(麻)とピリ辛(辣)が特長。春雨や野菜、肉、団子などの具材を、香辛料を効かせた薬膳スープで煮込む。日本国内では23~24年頃からSNSを中心にZ世代に爆発的なブームとなり、専門店が増加している。市場を牽引するのがカシュ・カシュ(東京)が展開する「七宝(チーパオ)麻辣湯」。秘伝のスープと数十種類のトッピングから自分好みにカスタマイズできることが受け、若い女性を中心に人気を博している。昨年に同社がフランチャイズ展開を進めたことで全国に店舗が拡大。都市部を中心に競合店も増えている。
国産春雨を製造する森井食品では、麻辣湯向け業務用春雨の注文が昨年後半から急増しており、工場をフル稼働させて対応する。「従来の春雨メニューは『おかず』だったが、麻辣湯は言わばラーメンに近い『主食』。小麦麺の替わりにはるさめを使用するので、1食当たりの使用量が多い。麻辣湯ブームの継続に期待している」(森井啓修社長)。
はるさめの一種「マロニー」を製造するマロニー社の井上寿夫社長もこの新しい流れに期待を寄せる。アレンジメニューを紹介する同社サイトでは、この1年間に焼きそばやチャプチェなど鍋以外のメニューの検索が2倍近い数字に上昇した。「これまでの鍋の名脇役としてのスタンスも大切だが、麺の代替品としての訴求を強化していきたい」と話す。今秋発売した新製品の裏面に麻辣湯のシズル写真を掲載したほか、新たに「麺マロニー」のロゴを作成して今後露出を増やす方針だ。
米粉麺の「焼ビーフン」を展開するケンミン食品では、今秋の家庭用新製品として春雨を使用した「おうちの野菜でもう一品」シリーズ6品を投入した。同社調査で春雨商品の購入世代に若年層が多いことが分かり、若い共働き夫婦向けに簡単調理商品を発売した。冷凍食品事業においても春雨商品群が好調で、ドライ事業を含む春雨商品群の売上は、3~9月累計で6%伸長した。
(10月31日付本紙に「はるさめ・ビーフン特集」)



 
                                    